園長ブログ

高等教育就学率

2014/04/23

ユニセフのレポート『イノチェンティレポートカード11先進国における子どもの幸福度ー日本との比較特別編集版』の教育分野について書いていたつもりが、少し違う話になってしまいました。
レポートの「教育」分野において「就学前教育就学率」の次に指標になっているのは「高等教育就学率」です。
高等教育
教育課程のもう一方の端に位置する高等教育就学率は、高校や大学に在籍している 15〜19歳の若者の割合を示す。高等教 育就学率は「教育面の豊かさ」を表すだけでなく、義務教育を無事に終了したことも示すものである。さらに、当然のことながら、成人期の最初の段階で幅広い機会に恵まれるこ とも意味する。
日本は若者の 88.6% が高等教育 を受けており、31カ国中10位に ランキングされている。
とレポートにはあります。

高等教育就学率の高い方から、ベルギー1位(93,2%)、ポーランド2位(92.7%)、アイルランド3位(92.1%)となっています。ドイツ(88.5%)が日本に次いで10位、フィンランド(86,9%)が13位となっているのは、結構早い段階から、高等教育を受けるのか、職業訓練校に進むのかなどの進路を決めてしまうからでしょうか。オランダなどは、一旦進路を決めてそちらに進んだけれども、途中で考えが変わっても、進路を変更しやすいシステムになっていると聞いたことがあります。一方、ブルガリア29位(75.5%)、ルクセンブルク30位(75.3%)、英国31位(73.7%)となっています。英国の低さは何か理由があるのでしょうか。

新しい制度

2014/04/22

子ども子育て新システムで促進しようとしている新しい幼保連携型認定こども園は、子どもを満3歳以上と満3歳未満で分け、更に保育を必要とする、しないで分けています。「満3歳以上児の受入れを義務付け、標準的な教育時間の学校教育を提供。また、保育を必要とする子どもには、学校教育に加え、保護者の就労時間等に応じて保育を提供。」「保育を必要とする満3歳未満児については、保護者の就労時間等に応じて保育を提供。」という具合です。満3歳未満の保育が必要な子どもにのみ保育を提供ということは、この部分については、現在の保育園とそう変わらなさそうです。ただ、「満3歳未満児の受入れは義務付けないが、満3歳未満児の受入れを含め、幼保連携型認定こども園の普及を促進する。」と追記があります。

また、満3歳以上の子どもは、基本的には学校教育を行い、そのうち保育が必要な子には学校教育と保育を行う。とあります。
認可の基準といった話なので、複雑になるのは否めないのかもしれませんが、どうも現行制度があった上での議論に思えてしまいます。

全ての乳幼児が最も良く育つことができる基本的な考え方を整理し、現行制度にとらわれることなく、原点に戻って考えるにはどうすれば良いのでしょうか。

保育環境研究所ギビングツリーから、「乳幼児教育法試案」が示されているので、次に紹介します。

乳幼児教育法試案( Educational Concepts for Early Childhood)

保育環境研究所ギビングツリーでは「乳幼児教育法試案」を提案します。これは、日本で批准している強い拘束力のある国際法である「こどもの権利条約」を基に、乳幼児教育に関する基本的な考え方を整理したものです。

1.すべての国民は、生まれながらにして 教育される権利がある。

2.乳幼児に対する教育は、子どもの最善の利益が最も大切にされることが優先課題である。

3.すべての乳幼児は、その発達において、今を大切にされ、自分らしく生きる権利がある。

4.乳幼児は、人格、才能 並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達が保障される権利がある。

5.乳幼児期は、生涯にわたっての教育の基礎を培う最も大切な時期であり、決して学校教育の準備期としての教育であってはならない。ただし、人生の出発点をより強固にするために、その後の初等教育との接続を大切にする必要がある。

6.乳幼児期は、人として生きていくための意欲、探究心、社会の一員である意識、コミュニケーション能力、身体的機能の調和的発達、自律と自立などを身につけていくことが課題である。

7.乳幼児期における教育は、環境を通して行うことを基本とし、教育のために乳幼児に とってのよい環境を用意しなければならない。

8.乳幼児は、自分に影響する事項について自由に自己の意思を表明することができ、自分に関係する事項については、その策定において参画することができる。

9.すべての乳幼児においての尊厳を大切にされ、自立を妨げることを排除する。

10.ここでいう乳幼児とは、生まれてからおおむね8歳までと定義する。

子どもが育つ

2014/04/21

「就学前教育の就学率」という指標がユニセフの先進国における子どもの幸福度の調査で用いられていました。そこで、改めて就学前教育とはなんだろうと考えてみました。就学前ですから、日本で考えれば、幼稚園や保育園などで行われる教育というのが一般的なのかと思います。最近「教育」ということばを耳にする機会が増えたように思います。特に子ども子育て新システムのことが話題にのぼりやすいからかもしれません。子ども子育て新システムでは、「学校教育」ということばがよく使われています。そして「学校教育」と「保育」は並列的にあつかわれ、相対する概念のように説明されているように思えます。私たちは就学前教育をどう考えれば良いのでしょうか。

保育所保育指針には、

実際の保育においては、養護と教育が一体となって展開されることに留意することが必要である。(第3章 保育の内容)

とあります。保育園では日常の保育において、養護と教育が一体となって展開されるよう留意しています。指針にはこう続きます。

ここにいう「養護」とは、子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助や関わりである。また、「教育」とは、子どもが健やかに成長し、その活動がより豊かに展開されるための発達の援助であり、「健康」、「人間関係」、「環境」、「言葉」及び「表現」の5領域から構成される。

教育とは、「子どもが健やかに成長し、その活動がより豊かに展開されるための発達の援助」なのです。あくまでも子どもが主体です。大人が教え込むことではありません。保育者は子どもが自発的、意欲的にかかわれる環境を構成する事によって子どもの発達を援助するのです。これが、保育所保育指針に示された「教育」です。更にこう続きます。

この5領域並びに「生命の保持」及び「情緒の安定」に関わる保育の内容は、子どもの生活や遊びを通して相互に関連を持ちながら、総合的に展開されるものである。

つまり、養護と教育が「子どもの生活や遊びをとして相互に関連を持ちながら、総合的に展開される」のです。当然と言えば当然です。子どもは生活の中で様々なことを学び発達してゆきます。それを保育者が支えてゆくのに「養護」と「教育」という側面が考えられるということなのです。子どもは、全体として育てゆくのです。

教育?

2014/04/20

就学前教育を受けている子どもの就学率がユニセフの子どもの幸福度の指標の一つとして取り上げられていました。1位のフランスは就学率100%です。

最近、「教育」ということばがよく聞かれます。子ども子育て新システムでの話であったり、早期幼児教育の重要性であったりします。

ところで、「教育」というとどんなイメージでしょうか。「お勉強」という感じですか。学校の教室のイメージですか。では、幼児教育(就学前教育)と言うとどんなイメージですか。教育というと学校の教室のイメージを思い起こす人が多いのではないでしょうか。子ども子育て新システムの議論の中でも、

新システムにおいて国が促進しようとしている、新たな幼保連携型認定こども園は「学校教育・保育及び家庭における養育支援を一体的に提供する施設とする。」と言われています。「ここで言う「学校教育」とは、現行の学校教育法に位置付けられる小学校就学前の満3歳以上の子どもを対象とする教育(幼児期の学校教育)を言い、 「保育」とは児童福祉法に位置付けられる乳幼児を対象とした保育を言う。」(子ども・子育て関連3法について 平成25年4月 内閣府・文部科学省・厚生労働省)と規定はしていますが、保育園からすれば、「学校教育」といわれると何か新しいことをしなくてはいけないように感じてしまいます。

『子ども・子育て関連3法について』(平成25年4月 内閣府・文部科学省・厚生労働省)から、新たな幼保連携型認定こども園についての記述の一部を引用してみます。

新たな幼保連携型認定こども園
○ 学校教育・保育及び家庭における養育支援を一体的に提供する施設とする。
※ ここで言う「学校教育」とは、現行の学校教育法に位置付けられる小学校就学前の満3歳以上の子どもを対象とする教育(幼児期の学校教育)を言い、 「保育」とは児童福祉法に位置付けられる乳幼児を対象とした保育を言う。以下同じ。
ア 満3歳以上児の受入れを義務付け、標準的な教育時間の学校教育を提供。 また、保育を必要とする子どもには、学校教育に加え、保護者の就労時間等に応じて保育を提供。
イ 保育を必要とする満3歳未満児については、保護者の就労時間等に応じて保育を提供。
※ 満3歳未満児の受入れは義務付けないが、満3歳未満児の受入れを含め、幼保連携型認定こども園の普及を促進する。
○ 学校教育、児童福祉及び社会福祉の法体系において、学校、児童福祉施設及び第2種社会福祉事業として位置づける。
※ 幼保連携型認定こども園は、幼稚園と同様に、小学校就学前の学校教育を行う学校であることを明確にする。
※ 幼保連携型認定こども園は、小学校就学前の学校として、小学校教育との連携・接続が必要であることについて明確にする。
○ 幼保連携型認定こども園の設置主体は、国、地方公共団体、学校法人又は社会福祉法人とする。(既存の 幼稚園及び保育所からの移行は義務づけない。)

就学前教育

2014/04/19

子どもの幸福度を測るユニセフのレポート『イノチェンティレポートカード11先進国における子どもの幸福度ー日本との比較特別編集版』の「子どもたちの物質的豊かさ」「健康と安全」について見てきました。「教育」の分野はどうなっているでしょう。教育分野の構成要素と指標は次の通りです。

1. 就学
⑴就学前教育就学率 (就学前教育を受けている4歳〜義務教育開始年齢までの子どもの割合)
⑵高等教育就学率 (高等教育を受けている 15 〜 19 歳の若者の割合)
⑶ニート率 (就学・就労・職業訓練のいずれも行っていない 15 〜 19 歳の若者の割合)
2. 学習到達度
⑴読解、数学、科学についての PISA テストの平均点

日本はこの教育分野の分野別順位で1位になっています。PISAテストの成績が良かったというのがその理由です。

この分野の所見は
▶子どもの教育面の豊かさでは、日本をトップにオランダ、ベルギー、ドイツ、フィンランドが上位にランキングしており、いずれも総合点が31カ国の平均を大幅に上回っている。
▶ 日本のランキングが高い主な要因は、PISAテストが好成績なことである。
とあります。

⑴就学前教育就学率が最初の指標となっていますが、フランス(1位)は100%続いてオランダ99.6%、スペイン99.4%、ベルギー99.1%、デンマーク98.1%、日本は97.9%
と続きます。ここでは、就学前教育就学率を、就学前教育を受けて いる4歳から義務教育開始年齢までの子どもの割合と定義しています。

就学前教育ですから、幼稚園や保育園に通うなどして、何らかの教育を受けている子どもが多いということです。

健康と安全 2

2014/04/18

第2の分野「健康と安全」のうち出生児の健康の指標を見ると、日本がどこかいびつに感じられてならないのは、私だけなのでしょうか。
健康と安全の項目の第2の指標は、「子どもの予防医療の利用可能性」(はしか、ポリオ、3種混合(DPT3) ワクチンの接種率)です。レポートには次のようにあります。

先進諸国の定期予防接種率は平均で見ると 95% 近くであり、高水準となっている。したがって乳児死亡率の場合と同様、各国間の比較的小さな差異には、全ての子どもが受ける権利を有する基本的予防医療を、社会的に最も疎外されている子どもを含む全ての子どもに提供するとい う理想に対するコミットメントが反映されていると言える。

12 〜 23 か月の子どもの、はしか、ポリオ、3種混合(DPT3)の平均接種率が高い国は、ハンガリー(99%)、ギリシャ(99%)、スロバキア(98.7%)、フィンランド(98.7%)、チェコ(98.7%)、ルクセンブルク(98.%)となっていて、アイスランド、スウェーデンといった国は順位を下げているのはなぜなのだろうと思いました。また、オーストリア31位(80.7%)、カナダ30位(84.3%)、デンマー ク29位(88.3%)の予防接種率が低いのは、信憑性のない噂の影響が疑われるようですが、レポートは「しかし、これが低接種率の「言い訳」 になることはない。なぜなら、効果的な予防接種プログラムを実行する ということは、一般市民に十分な情報を提供し、偽の情報によって子ど もを危険にさらすことがないようにすることも含まれるからである。」としています。

日本でも、予防接種に対する考え方は、いろいろあるようですが、何を選ぶのかはよく考えた方が良いですね。

健康と安全についてのもう一つの指標は「1〜 19 歳の子どもと若者の死亡率」です。レポートには「この年齢層の死亡は先進国ではま れであり、その原因は疾病や医療制度の有効性にとどまらず、自殺、殺人、交通事故、水難、転落、火災に よる死亡が含まれる。したがって、 この年齢にある子どもと若者の死亡率における各国間の差異は、幼児期 と青年期を通じた全体的な健康と安全の水準を反映していると言えるだ ろう。」とあります。

レポートの所見は次の通りです
▶子どもの死亡率が 10 万人あたり 15 人以下のアイスランド、ルクセンブ ルク、スイス、オランダ、スウェーデン、スペインが上位を占めている。
▶日本は 10 万人当たり 15.5 人で7位である。

ブルガリア27位(33.3人)、ラトビア28位(34.7人)、ルーマニア29位(37.5人)は1位のアイスランド(11.3人)と比べると3倍以上です。

健康と安全

2014/04/17

「物質的豊かさ」が第1分野の項目で取り上げられている『イノチェンティレポートカード11先進国における子どもの幸福度ー日本との比較特別編集版』では日本の子どもが意外なまでに貧困の中で生活していることがわかって少しショックです。では、第2の分野「健康と安全」ではどうでしょう。「健康と安全」の分野は次の構成要素と指標によって比較されています。

1. 出生時の健康
⑴乳児死亡率
⑵2,500グラム未満の低出生体重児出生率
2. 子どもの予防医療の利用可能性
⑴はしか、ポリオ、3種混合(DPT3) ワクチンの接種率
3. 子どもの健康と安全
⑴1〜 19歳の子どもと若者の死亡率(死因を問わない)

1.⑴乳児死亡率は、ほとんどの先進諸国では1,000人あたり10人未満に低下しており、小さな差異は衛生設備などによるものではなく、すべての妊婦、出生、 乳児を守るために必要ないかなるサービスも提供するというコミットメントや能力の違いを反映したものだと分析しています。日本の乳児死亡率は出生1,000人につき 2.4 人で、31 カ国中4番目に低い結果となっています。日本は、医療技術の進歩がすごいのだと思います。16年ほど前、しばらくNICU(新生児集中治療室)に通う経験をしましたが、その当時でも様々な設備や技術に感心していた記憶があるので、今はもっとすごいのかと思います。

1.⑵ 2,500グラム未満の低出生体重児出生率について、日本は少し異常だと思いました。出生時の体重が 2,500 グラム未満の乳児の割合がとても高く、データが入手可能な27ヶ国の最下位、つまり、低体重で生まれた子の割合が最も高いのです。
レポートにはこうあります。「日本は低出生体重児出生率が過去 30 年間でほぼ倍増している。(1970 年代後半の5%から 2000 年代後半には約 10%)が、これは先進国の中でも特異である。専門家はこの上昇 について、低体重の女性の増加、若い女性の喫煙の増加、妊娠中に厳格な食事管理を行う傾向、所得格差の拡大など様々な原因を挙げている。」

乳児死亡率は非常に低いのに、低体重児がこれほど多いという極端な偏りは、どこか変です。設備や技術などは生まれてくる子どもにとって良い方に働いているにもかかわらず、過度なダイエット、喫煙など、女性の行動やその背景に胃ある価値観が、子どもにとって良くない方向に働いているように思えてなりません。

子どもの貧困対策

2014/04/16

日本の子どもたちの貧困がこれほどまでに深刻だとは思わなかった。という人は多いでしょう。そういえば、貧困にあえぐ子どもたちの支援をしていらっしゃるNPOの方の話を聞いたことがありました。たしか子どもたちの居場所を提供するような活動をされていたと思います。

政府レベルで、こうした子どもを支援することが必要だと思って調べていたら、2013年6月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が可決され、平成 26 年1月17日に施行され、これによって、政府は子どもの貧困について対策を講じることが義務付けられた。これに基づいて、子どもの貧困対策に関する大綱が定められ、子どもの貧困についてモニタリングする仕組みがつくられる。各都道府県でも、子どもの貧困対策についての計画を定めるよう努めることとされている。ということを知りました。

子どもがより良く育つことがより良い未来につながります。貧困により子どもたちの育ちに良くない影響が出るということは、未来が良くなくなるということです。みんなが良くなることが、みんなの大きな幸せにつながっているのです。だからこそ、子どもは幸せに育って欲しいのです。

法律の条文は次の通りです。

子どもの貧困対策の推進に関する法律 (平成二十五年法律第六十四号)
(目的)
第一条 この法律は、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策に関し、基本理念 を定め、国等の責務を明らかにし、及び子どもの貧困対策の基本となる事項を 定めることにより、子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的とする。

(基本理念)
第二条 子どもの貧困対策は、子ども等に対する教育の支援、生活の支援、就労の支援、経済的支援等の施策を、子どもの将来がその生まれ育った環境によっ て左右されることのない社会を実現することを旨として講ずることにより、推進されなければならない。
2 子どもの貧困対策は、国及び地方公共団体の関係機関相互の密接な連携の下 に、関連分野における総合的な取組として行われなければならない。

「子どもの将来がその生まれ育った環境によっ て左右されることのない」貧困という環境にあっても、心も身体もすこやかに育つ機会は保証される社会になると良いですね。

物質的剥奪

2014/04/15

金銭的剥奪は、子どもの相対的貧困率と、子どもの貧困ギャップという指標を用いて表されましたが、物質的剥奪は子どもの剥奪率という指標で表されます。相対的貧困率は子どもたちが生活している社会での相対的な地位がわかりますが、実際にどのような生活を送っているのかということを表すことはできません。そこで、物質的剥奪(子どもの剥奪率)という指標を用いて測られます。
各国における1歳〜12歳子どもについて、次の8品目のうち2つ以上が欠如している子どもたちの割合によって測られています。8品目とは

1.子どもの年齢と知識水準に適した本(教科書は除く)
2.屋外レジャー用品(自転車、ロー ラースケートなど)
3.屋内ゲーム(子ども1人につき 1つ以上(知育玩具、積み木、盤ゲー ム、コンピューター・ゲームなど)
4.修学旅行や学校行事の参加費
5.宿題をするのに十分な広さと照 明がある静かな場所
6.インターネットへの接続
7.新品の衣服(中古品を除く)
8.誕生日、命名日、宗教行事など のお祝い
です。

これらのうち2項目以上が欠如している子どもの割合で比較しています。日本はこの割合が7.8パーセント31ヵ国中チェコ・ベルギー・スペインに次いで18位です。日本で欠如している割合がもっとも高い項目から順に並べると次のようになります。
・インターネットへの接続(0.11%)
・宿題をするのに十分な広さと照明がある静かな場所(1.0%)
・新品の衣服(中古品を除く)(0.07%)
・屋内ゲーム(子ども1人につき 1つ以上(知育玩具、積み木、盤ゲー ム、コンピューター・ゲームなど)(0.03%)
・屋外レジャー用品(自転車、ロー ラースケートなど)(0.02%)
・誕生日、命名日、宗教行事など のお祝い(0.02%)
・修学旅行や学校行事の参加費(0.01%)
・子どもの年齢と知識水準に適した本(教科書は除く)(0.01%)

「インターネットへの接続」は、子どもが犯罪に巻き込まれるきっかけになる可能性が高いという理由から、日本ではあまり推奨されていないように思うので、欠如率が高いのでしょうか。宿題をするのに十分な広さと照明がある静かな場所が欠如している子どもが1%もいるのですね。新品の衣服が欠如しているというのは、「まだきれいだけれど、サイズが合わなくなくなったから、どうぞ。」と知り合いに差し上げるなどのリサイクルが行われているから、3番目になっているのでしょうか。それとも、もっと深刻な話なのでしょうか。

レポートの所見には、
▶物質的剝奪は、各国の総合的な経済発展水準によって大きく異なる。
▶「長年にわたって高所得を維持してきた」国の多くでは物質的剝奪率が5%に満たない。一方、ラトビア、ブルガリア、ルーマニアなどの非OECD加盟国の物質的剝奪率ははるかに高い。
▶日本の子どもの剝奪率は7.8%で、ほとんどの「長年にわたって高所得を維持してきた」国より高い。
としています。
「長年にわたって高所得を維持してきた」国であるはずの日本で剥奪率が高いのはどういう理由なのでしょう。不思議です。

貧困

2014/04/14

『イノチェンティレポートカード11先進国における子どもの幸福度〜日本との比較特別編集版』では、31ヵ国の子どもたちの状況を「物質的豊かさ」「健康と安全」「教育」「日常生活上のリスク」「住居と環境」の5つの指標を用いて比較しています。
日本が5つの分野のうち、「物質的豊かさ」の項目が一番低いというのにはちょっと驚きです。物が豊かになって心の豊かさが失われ、物の豊かさより、心の豊かさが大切といわれて久しいので、物は豊かなのだと思っていましたが、物質的豊かさも31ヵ国の平均を下回っているなんて、にわかには信じられませんでした。では、物質的豊かさは、どのようにして計るのでしょうか。
この調査で物質的豊かさをはかるための構成要素は「金銭的剥奪」と「物質的剥奪」の2つです。評価の指標として、金銭的剥奪は「子どもの相対的貧困率」と「子どもの貧困ギャップ」。物質的剥奪は「子どもの剝奪率」という指標でそれぞれ表わされるそうです。

子どもの相対的貧困率
金銭的剝奪の評価に用いられている「子どもの相対的貧困率」とは、世帯所得をもとに国民一人ひとりの所得を計算して順番に並べ、真ん中の人の所得の半分に満たない人の割合です。それぞれが属する社会の大半の子どもたち が「当然のこと」と捉えている利益や機会を得ることができない子どもたちの割合を示していて、単純な購買力よりも国内の所得格差に注目する指標であるため、日本など比較的豊かな先進国でも高い割合が示されるそうです。日本は 31 カ国中 22 位にランキングされており、これは子どもの相対的貧困率で見た場合、先進諸国の中でも子どもの貧困率が最も高い国 の1つであることを示しています。

子どもの貧困ギャップ
子どもの相対的貧困率は、相対的貧困ラインより下の生活をしている子どもの割合を示していますが、 子どもが貧困ラインのどれほど下にいるのかという、子どもの相対的貧困の深刻度はわかりません。「子どもの貧困ギャップ」は、貧困世帯の所得がどれほど、貧困基準から離れているか、という指標です。つまり、貧困の深刻度を表しています。この指標では、日本は31カ国中26番目。日本では、貧困の子どもが多いと同時に、貧困の深刻度も高い、ということになります。
日本では、所得が相対的貧困ライ ン未満の世帯で暮らしている0〜17 歳の子どもの割合は約 15% で、 その所得は相対的貧困ラインより 30% 以上少ない。一方、オランダ やオーストリアでは、相対的貧困ラ イン未満の世帯で暮らしている子ど もの割合は6〜8% で、その平均 所得は貧困ラインより約 16% 少な いのです。

驚きの数字です。日本では、格差が広がっているということ。そして、貧困にあえいでいる子どもたちが増えているということは間違いないようです。

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