おいしいいちごについて書いていたら、味覚のことが気になりました。乳幼児期は味覚が発達するときなので、この時期に経験した味が大人になったときの味の好みになると言われています。特に離乳期は大切で、離乳期に塩辛いものを多く食べていると大人になっても塩辛いものを好むようになるそうです。では、赤ちゃんはいつ頃から味を感じているのでしょうか。味を感じる味蕾という器官は妊娠12〜14週くらいから機能しはじめ、15週には味覚ができあがると言われています。味蕾の数は大人で約9,000ですが、赤ちゃんにはその1.3倍の12,000もあるそうです。味蕾の数だけで言えば赤ちゃんは大人よりも敏感に味を感じているのです。大人には感じられない味も感じていていて、発達するに従って必要の無いものは減らしてゆくのですね。発達するというと、獲得するとか、身につけるとか、どことなく付け足すイメージが強いのですが、逆にそぎ落とすこと、減らすことで発達していることがこの味蕾の数からもわかります。赤ちゃんは羊水を飲んでいますが、羊水に甘い味をつけると良く飲み、苦い味をつけるとあまり飲まなかったり、顔をしかめたりすることがわかっています。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるときから味を感じているのですね。
味覚は、甘味、酸味、塩味、苦味の4種類(これにうま味を加えて5種類とすることもあります)があるとされています。子どもは野菜が苦手なことが多いのですが、これは野菜に含まれる苦味に拒否反応を示しているからです。苦味は毒だと思って本能的に拒否するのです。また酸味は腐敗していることと関係しているので、酸味も好まなかったりします。毒のあるものや、腐ったものは生命を脅かす可能性があるので、本能的に食べないようになっているのです。それに対して甘味はエネルギーの補給、塩味はミネラルの補給など生命の維持に必要なものなので、基本的に好みます。
では、なぜ成長するにつれて苦いものや酸っぱいものが食べられるようになるのでしょうか。それはひと言で言えば、慣れです。小さいときは苦味や酸味を本能的に拒否しますが、味を敏感に感じたとしても、それがおいしいとか、おいしくないという価値判断はしていません。その判断の基準は幼少期の食生活にあるといえます。つまり、だれと、なにを、どんな状況下で食べるかが重要になってくるのです。離乳食を口にしたとき「おいしいね」と笑顔で声をかけてあげると、赤ちゃんは「この感覚がおいしいということなんだ」とわかります。また、一緒に食事している誰かが、おいしそうに食べているものは「おいしいのかな」と思って食べたくなります。ですから誰かと一緒に食事をするというのは大切なことなのです。それも、お母さんと子どもの二人っきりではなく、赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまでいろいろな人がいる中で食事をすることが大切になってきます。いろいろな人が一緒に食事をすることで、赤ちゃんや子どもは、だれがどのようにして食べているかを見ることができるからです。