八月の下旬といえば地蔵盆です。各町内にいらっしゃるお地蔵様を祀って礼拝し、子どもたちが集まって、ゲームや福引きをしたりして遊びます。鞍馬だけでも6箇所で地蔵盆の行事が行われます。普段は町内の祠などにいらして静に町内をお守りくださっているお地蔵様ですが、この日ばかりは会場となる家にしつらえられた壇の上にお出ましになって、集まってくる子どもたちをお守り、ご利益を授けてくださいます。
長い年月にわたり毎年続けられてきた地蔵盆で使われている様々な道具を見ると、その歴史がうかがえます。大正時代に作られた幕だったり、数珠繰りといって、みんなで一緒に一連の大きな数珠を持って輪になって座り、お地蔵様の真言を唱えながらその数珠をまわすことをします。その数珠繰りに使われている数珠の箱書きには江戸時代の年号と寄進した人の名前が入っています。
私が手伝っている町内だけでもそうなので、各町を回ってみると、それぞれに歴史のある道具が使われているのだと思います。ずっと昔からこの行事を受け継いできた人々の思いが詰まった伝統を感じずにはいられません。そうやって毎年繰り返し積み重ねてゆく事で伝統や歴史ができあがってゆくのです。毎年の積み重ねは、毎日の積み重ねの上にはじめて成り立ちます。何気ない日常を心を込めて丁寧に生きてゆく事の大切さを思いました。保育園の前にも、童形六体地蔵尊というお地蔵様がいらっしゃって、
子どもたちが登降園のときに手を合わせています。散歩でよく通る参道にも、牛若丸が拝んでいたといわれる川上地蔵尊がいらっしゃるので、8月23日には子どもたちと地蔵盆のお参りをして園舎の二階で数珠繰りをします。この園での地蔵盆のお参りに先駆けて、年長の子どもたちが童形六体地蔵尊のお身ぬぐいをしました。石のお地蔵様なので、水をかけて洗います。細かな凹凸があってきれいにするのは難しいのですが、子どもたちは1時間以上もかけて真剣に洗っていました。おかげで、お地蔵様はさっぱりときれいになってくださいました。
お顔も嬉しそうに見えます。さっぱりとしていただいた後は、六体のお地蔵様それぞれに新しいよだれかけをつけてさし上げます。今回のよだれかけは深いブルーにレースをあしらった爽やかで涼しげなデザインです。このよだれかけは卒園児の保護者が毎年地蔵盆前と年末に新調してご奉納くださるものです。もう15年以上も続けてくださっていると思います。年に2回とはいえ、それだけ続けるのは容易なことではありません。ここにも歴史が積み重ねられています。また、保護者の皆様はじめ、お寺の関係の方々がたくさんのお供え物をくださいます。いろいろな人がご縁をつないでくださることで行われる地蔵盆。お地蔵様がみんなの心をつないでくださっているのだと思います。このお地蔵様のお心に違うことのないよう、多くの人と心をつなぐことを実践してゆかなくてはなりません。