園長ブログ

雲珠桜

2012/04/15

暖かな日曜日になりました。桜は咲いたかなと、お寺に行ってみると、ずいぶん花が増えています。朝より夕方にはもっと増えました。お寺では花供養の中日法要が行われました。桜もちょうど咲き始め、淡い色に包まれた境内にはほのかに甘い香りが漂っているかのようです。箏曲や尺八の奉納、合気道の演武奉納などが行われ、陽春ということばがふさわしい華やいだ空気に包まれていました。

今日から10日ほどが、鞍馬の桜が美しいかもしれません。ソメイヨシノに限って言えばです。他にも様々な八重桜やしだれ桜、山桜など染井吉野の他にも多くの種対の桜があります。例年は染井吉野が咲く前に山桜が可憐な白い花を咲かせているのですが、今年はまだです。染井吉野に気を取られていたら、八重桜もつぼみが膨らみ、咲きそうになっている花がありました。これからしばらくは美しい桜が楽しめそうです。

「鞍馬」「桜」といえば、

花咲かば、告げんと言いし山里の、使いは来たり馬に鞍、鞍馬の山の雲珠桜、手折り栞を知るべにて、奥も迷はじ咲き続く・・・

謡曲『鞍馬天狗』の一部です。ここに出てくる雲珠桜(うずざくら)とはどんな桜なのでしょうか。これにはいろいろな説があります。

唐鞍といって正式な行列などで馬を飾るための馬具があります。その馬具の鞦(しりがい)につける、宝珠の形をした飾り金具を雲珠(うず)といいます。

①花の形が、この雲珠に似ている桜という説
②鞍馬山の桜を総称して雲珠桜という説
③様々な桜が緑の木々の中に咲く様子が、馬具の飾り金具である雲珠に似ているからという説
④馬の鞍と鞍馬が通じることから、「鞍馬山の雲珠桜」と鞍馬山という固有名詞を冠してこそその意味がある。雲珠桜とは雲珠のように咲く鞍馬山の桜という意味で特定の品種ではないとする説もある。
⑤冠にさす飾りを髻華(うず)といい、古くは髪に草木の枝をさして飾りとしたことで、鞍馬山の桜を手折り髪に挿したところから、雲珠桜(うずざくら)と呼ぶという説。

①は雲珠桜という特定の品種があるという説、②③④は鞍馬山に咲く桜を総称して雲珠桜という説、⑤は優雅です。

雲珠桜という固有品種があったとも言われているようですが、そうだったとしても、総称だとしても平安時代から鞍馬の桜は有名だったようです。

「これやこの音に聞きつる雲珠桜 鞍馬の山に咲けるなるべし」『定頼集』

唐鞍(『日本国語大辞典』小学館)

 雲珠(『日本語大辞典』小学館)

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