園長ブログ

知らない世界

2012/03/17

何気なく、もしくは悪意ではなく善意ででも魚を放流することが与える影響の大きさを知り、考えさせられました。琵琶湖博物館の企画展「明日へつなぐ日本の自然-よみがえれ、日本の希少淡水魚-」の話しです。希少淡水魚を通じて、自然環境保全の重要性について考える機会を提供する展示です。

「喰い荒らされる日本の財産」というタイトルで訴えられていたのは、外来魚が引き起こす食害の問題です。オオクチバス(ブラックバス)やブルーギルなど魚食性の強い外来魚の放流が、昔からそこで生息していた日本固有の在来魚を食べてしまうために、在来魚が減少絶滅の危機に瀕している問題です。この問題は、ある意味わかりやすく、報道でも取り上げられることが多いので知っていました。

しかし、在来魚が減ってきている理由は食害によるものだけではないそうです。遺伝子の攪乱が引き起こす問題も深刻です。つまり、近縁種による交雑で雑種に置き換わったり、昨日のブログで紹介した同じ種類でも違う地域の魚が入ってくることで起こる遺伝子の攪乱が問題になっています。パネル展示で取り上げられていたのは、滋賀県米原市の地蔵川に住むハリヨの例です。ハリヨの鱗は通常5枚〜10枚ですが、地蔵川に住むハリヨには2008年頃から同じトゲウオの仲間のイトヨと同じ20枚〜30枚の鱗を持つ個体がみつかるようになり、遺伝子を調べてみるとほぼ全ての個体がイトヨと交雑をして雑種化が進んでいたのです。これにより、地蔵川のハリヨはほぼ全滅状態にあると考えられています。幸い別の支流で純粋なハリヨが生息していることがわかり絶滅は免れました。
本来北日本などに生息するイトヨが滋賀県で見つかったこの例は、同じ国内の淡水魚でも異なる別の地域に入ることで、そこにいる貴重な生物を滅ぼしてしまう危険性があることを私たちに教えてくれています。という内容でした。

変化は常に起こっているので、変わってゆくことはしょうがないことですが、その原因が人間の無知や不注意によるのだとしたら・・・それも一つの姿なのでしょうか?どうなのでしょう?考えさせられました。

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