園長ブログ

魚の世界

2012/03/16

琵琶湖博物館の水族展示室に「よみがえれ!日本の淡水魚」というコーナーがあり、既に滅んでしまったミナミトミヨやクニマスの標本が展示されています。

クニマスと言えば、一昨年くらいだったでしょうか、絶滅したとされていたのに発見されたというニュースが流れていました。クニマスは秋田県の田沢湖にしかいなかった固有種で、水質の悪化などにより絶滅したといわれていたのが、富士五湖の一つ西湖で発見されたというものです。魚に対する豊富な知識を活かしてテレビなどで活躍しているさかなクンが再発見に貢献したという報道が印象的だったのを覚えています。

「よみがえれ!日本の淡水魚」コーナーで「明日へつなぐ日本の自然-よみがえれ,日本の希少淡水魚-」という企画展がされていました。興味深い内容だったので、パネル展示の内容を要約して紹介させて頂きます。

環境省の2007年版「絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト」(レッドリスト)には、日本にいる約400種類の淡水魚のうちの144種類が絶滅の恐れがあるとされています。その背景には、乱獲や水質の悪化など様々な要因がありますが、最近問題になっているのが、無秩序な放流です。釣りの愛好家がオオクチバスなどを密放流することだけではなく、ペットショップで買ったメダカなどをなにげなく近所の池や川に放してしまうことも問題です。

淡水魚は同じ種であっても生息する場所によって独自の進化をとげているので、長い時間をかけて獲得したその地域の魚にしかない遺伝的特性があります。例えば、メダカは大きく北日本の集団と南日本の集団にわかれていますが、最近の研究で約1800万年前に共通の祖先から別れたことがわかっています。同じメダカでも地域の特性を無視して放流してしまうと、1800万年かけて獲得してきたその地域のメダカの遺伝的特性が一瞬にして混ざってしまうのです。

漁業目的で、アユやコイなどを他の地域の河川に放流することも、地域の分布を超えて全国に広がってしまう原因となりますし、ビオトープなどに産地のわからない魚を放流することも問題なのです。

善意で行われることが多い放流ですが、一方で困ったことも起こっています。自然を守ってゆくためには、まず起きている問題を正しく認識し、望ましいことは何なのかを考えてゆく必要があるのです。(文責筆者)

こういったことがパネルで展示されていました。私たちは、つい一方的な見方でものごとを判断しがちですが、本当に大切なことは何なのかよくよく考える必要があると思います。

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