奈良時代、朝廷は東征政策を進め、724年に多賀城を築いた。このころ蝦夷の勢いが強くなり各地で反乱を起こした。そこで鎮圧のため数度にわたって大軍が派遣され東北地方への侵攻が進んだ。こんなことを日本史で習ったように思います。
紀古佐美に率いられた2万5千余りの大和朝廷の侵攻軍を、1千5百人ほどの軍勢で打ち破た蝦夷のリーダーがアテルイです。しかし長期化する戦い、疲弊する蝦夷の土地と、増える犠牲者を思い盟友のモレとともに坂上田村麻呂に投降し、命を保証されますが、朝廷はそれを許さず、結局斬首されてしまいます。
先日、このアテルイを題材としたミュージカルを見ました。普段はそういった時間はほとんどないのですが、たまたまチケットを頂いたので、敢えて時間を取って家族と見に行ってみようと思ったのでした。
わらび座という劇団の「アテルイ〜北の耀星〜」というミュージカルです。
わらび座は1951年に創立。秋田県仙北市を拠点に、年間約1,200回の公演を全国で行っています。「人間の根源に迫り、その多彩な表現を通してより多くの人々の心に感動と幸福を生み出すこと」をその芸術的使命として、「人間の尊厳、いのちの美しさを描き、人々の心の糧、生きる力になる芸術活動を進める」ために活動している劇団です。
わらび座とのご縁は2007年に、ある方にご紹介を頂いて「義経ー平泉の夢」の舞台を鑑賞したのが最初です。このときも迫力のある舞台に心を動かされたのを思い出します。当時小学生だった長男と次男も何か感じるところがあったのか、劇中の歌を何日も歌っていました。
今回の「アテルイ〜北の耀星〜」のあらすじはこうです。(劇団ホームページより引用)
大和朝廷は蝦夷(えみし)を「まつろわぬ民」として征圧を企てる。 度重なる侵攻に、蝦夷は人間の誇りにかけて立ち上がる。その若きリーダーがアテルイだった。
大和軍との激しいたたかいが続く。 アテルイは今は征夷大将軍となった幼なじみの田村麻呂と岩手山の麓で一騎打ちの場面を迎える。 ふとよみがえる遠い記憶。 愛瀰詩。 エミシとは母の愛のような広々とした大河の詩を意味すると語り合った日を。
蝦夷の慟哭のような岩手山大噴火。 敗走する仲間たち。 その姿に、アテルイはついに決断する―。
劇中で盛んに発信されていたメッセージ、それは「蝦夷も同じ人間だということを認めさせたい」というものでした。
大和朝廷側から見ると、蝦夷は反乱を起こす鎮圧すべき勢力でしょう。劇中でも「野蛮な生活をしている獣のような存在」という描き方がされていました。日本史の教科書にも「各地で反乱を起こす蝦夷を鎮圧する」という書き方がされています。
一方、蝦夷にしてみれば、独特の文化を持ち平和に暮らしているところを侵略される。その侵略を阻止するため、自分たちの土地を生活を守るために戦ったのです。
この舞台を見て、「各地で反乱を起こす蝦夷を鎮圧する」ということばを何の疑問もなく受け入れてしまっていた自分に気がつきました。
どんな場合でもそれぞれの立場があり、それぞれの想いがあるということ、それを先入観や固定概念に縛られないでとらえ、考えることの必要性を感じさせられました。