平成24年の新しい年を迎えました。昨年は3月には東日本大震災と原子力発電所の事故、9月には台風12号による災害など日本国内だけでも大きな災害や事故が多発した年でした。世界各国でも大規模洪水や大地震などの災害がたくさん起こっています。また、欧州の信用不安をはじめ災害以外の様々な危機が世界を被い、今までの物事のあり方や価値観が大きく揺さぶられている気がします。
自然災害が起こるのはどうしようもないのですが、自然に対抗するような形で考えられてきた防護策は、自然の力の前にはあまりにも脆かったことを思い知らされました。原発事故は、今まであまり気にせずに使ってきた電気とそれに依存しきった私たちの生活のあり方に疑問を投げかけています。
私たちが、お金という実体のないものをあたかも最も大切なものかのように追い求めてきた結果、本来何の価値もない記号であるはずのお金が、現実を離れて膨れあがり、まるで最も価値があり一番大切にすべきものかのようにふるまうようになってしまいました。私たちが気付かないうちに今までの価値観やシステムが限界に来てしまっていることを、経済危機は示唆しているように思えます。
昨年、起こった様々な危機を目の当たりにして既存の価値観に疑問を持ち、新たな価値を見いだそうとしている人が多いようです。本当に大切にすべきもの、価値ありとすべきものは何なのでしょうか。今年はそのことについて深く考える年ではないでしょうか。
鞍馬山保育園は、「みんなのいのちが輝く」を理念に掲げています。「みんなのいのちが輝く」とは、大きくは人間や動植物はもちろん無生物にいたるまで、その存在意義と役割がより良く発揮できるという意味です。人間について言えば、お互いが認め合い、人々が排除や否定されることなく、それぞれの良いところを活かして共にいきいきと生きられることです。
そうできるように、まずは大人がお互いに認め合うよう努力しなくてはなりません。ついつい自分の意見だけが正しいと思い込み、人にそれを押し付けようとしがちですが、お互いに心を開いてフラットに意見交換を積み重ねられるようになれると良いと思います。
そして、園児たちが大人になった時にそういう社会を築いてくれることを願い、保育園でとても大切な時期を過ごす子どもたちが、
- 自分を発揮していきいきと過ごす。
- 友達とお互いを認め合う。
- 意見を交わしながら一緒に何かに取り組む。
- そして、そうすることがとても楽しい。
そんな経験をたくさんしてほしいと思っています。
まずは大人が見本になりたいものです。それは、決して派手なパフォーマンスや特別なものではなく、私たちの毎日の生活そのものなのです。あらゆる場面で自分の言動や想いまでもが「みんなのいのちが輝く」に向かっているのか、常に心のとめておくことです。日々何をどう考え、どう生きてゆくかを常に自分に問い直すのです。「本当に大切なことは何か」を考え、そのことに生きる年にしたいものです。