現在鞍馬寺で如法写経会が行われているのは8月最初の3日間だけですが、内容を簡単にご紹介しましょう。
毎朝、6時に法華懺法のお勤めをします。1日目の午前中は写経に使用する水を本殿まで取水に行き、道場に戻って立筆作法という書写を始めるための法会を修してから書写し始めます。昼食休憩を挟んで、午後も書写を続け、夕方には例時作法というお勤めをします。
2日目は朝の法華懺法と夕の例時作法は同様に修し、他の時間はひたすら書写を続けます。2日目の夕方までに妙法蓮華経と無量義経、観普賢菩薩行法経を写し終えて、3巻の巻物に調巻します。一般の信徒も3日間にわたり参加されるのですが、参加人数が少ないとすべてを書き上げるのが大変になってきます。
3日目、朝の法華懺法の次には調巻された経巻を経筒に封入して寳輿に納め、開眼してから十種の供養やその他のお供え物を捧げます。この十種の供養をお供えした後、埋納するかわりに寳輿ごと本殿に運んでお祀りします。
毎年、3日目の十種供養の法会に鞍馬山保育園の園児がお参りしています。今年は年長児(ゆりぐみ)の子どもたちがお参りをし、お供え物を運んで捧げました。1時間余りの法要ですが、みんなちゃんと正座して静かに参列していましたし、供物を捧げるときに、取り次いでくださる僧侶に自分の捧げるお供え物を渡したあとも、心を込めて合掌一礼していました。普段から園でお参りをしていることもあると思いますが、子どもたちは法要の凛とした空気を敏感に感じているのだと思います。でも緊張しすぎることなく、法要の途中、僧侶の唱える声明や雅楽の調べにあわせて、小さな声で同じように唱えたりして、それなりに楽しんでいたようです。法要の後は道場内のキラキラ光る法具を、それに負けないくらいに目を輝かせてながめたり、六牙の白象に乗ったお姿の普賢菩薩像を興味深げに拝んだり、散華を集めて参拝者に配ったりしていました。
翌日、園であった男の子に、「昨日は長い時間お参りしてくれてありがとう。」というと「ちょっと足が痛かったけど、楽しかったで。」とニコニコして答えてくれました。まさか「楽しかった」ということばが聞けるとは思っておらず、ちょっと意外でしたが、子どもたちなりに何かを感じていたんだな。それぞれの心に残ることがあったのだなと思うと、うれしくなってきました。