向かいの山に目をやると、常緑樹の緑のなかにちらほらと、さくらかなにかの白い花が見えました。雲珠桜(うずざくら)というのはこういう景色のことをいうのだろうな。と思いました。雲珠桜とは常緑の緑の中、白やピンクのさくらの花が点々と咲く様子が、馬具の飾りの「雲珠」に似ているから、そう呼ばれるといわれています。また鞍馬山に咲く桜の総称ともいわれます。
藤原定頼は「これやこの音にききつる雲珠桜 鞍馬の山に咲けるなるべし」と詠ん出いますし、謡曲『鞍馬天狗』には「花咲かば。告げんといひし山里の。告げんといひし山里の。使は来たり馬に鞍。鞍馬の山の雲珠桜。」の詞もあります。
昔の人が見ていたかもしれない。それに近そうな景色を見ているかもしれないと思うと、何だか不思議な気がします。