園で事務仕事をしていたら、玄関のベルが鳴りました。出てみると宅配便の配達員さんが荷物を届けてくださったところでした。伝票にサインをし荷物を受け取って園内に戻ろうとしたら、「あのー、すみませんが、こちらの保育園の方ですか?」と声をかけてくださる中年の女性がいらっしゃいました。この時期は紅葉を求めてお寺にお参りされる方が多いので、道でも尋ねられるのかなと思い「そうですが、何かご用ですか?」と尋ねてみると、「実は…」と話し始めてくださいました。
その方のお母様は昨年90何歳かで亡くなられたそうですが、そのお母様が80歳台の時に鞍馬のお寺にお参りをされ、木の根道を通って貴船に超えて行かれたそうです。その時に参道を散歩していた当園の園児たちと一緒になり、年上の子が歩くのが嫌だと泣いている小さな子に、京都のことばで「泣いたらあかんで!がんばるんやで!」と声をかけているのをご覧になったそうです。ちょうどそのころご病気かなにかで苦しんでいらっしゃったお母様は子どもの「泣いたらあかんで!がんばるんやで!」のことばにハッとさせられ、勇気づけられたとおっしゃっていた。教えてくださいました。それ以来お母様は、何度も鞍馬にいらしていたそうです。
その女性は、いつか母と一緒に鞍馬に来たいと思っていたけれども、結局それはかなわなかったので、母の歩いた道をたどろうと思って今日は静岡から来たんです。とおっしゃるのです。
その話をきいて、涙が出そうになりました。その時の子どももすごいし、子どものことばに勇気をもらったというお母様もステキです。そして、お母様がお好きだった木の根道を歩こうと、鞍馬にいらっしゃった女性の思いもステキだと感じたのです。
そして、たまたま外に出ていた私にそんな話を聞かせてくださったこと、どこか不思議です。もしかしたら、気づかないだけで、そこには何か意味があるのかもしれませんね。
それにしても、子どもの力ってすごいですね。素直だから、純粋だから、発する言葉が心の奥底に届きやすいのかもしれません。子どもたちの素直さを大切にしたいものです。