10月といえば、鞍馬ではなにを置いても「火祭」でしょう。以前にも書いたことがありますが、鞍馬の皆様の火祭に対する思い入れ、情熱は計り知れないものがあります。
松明を作るのだって、材料の入手からして大変なのです。松明には柴と呼ばれるツツジの枝がたくさん使われますが、5月頃に山に入って刈り取り、そのまま乾燥させて夏の終わりに枯れた葉などを取り除いてきれいにしたものを、9月に入ってから由岐神社の御旅所に運んで、松明を作るのに必要な量を各家に分けます。長さ、約4m、重さ100㎏ほどの大松明と呼ばれる松明も、中身はほとんどこの柴でできているといってもよいくらいなので、一本の松明を作るのにはこの柴がたくさん必要なのです。こういった材料の確保もなかなか容易ではないと聞きます。
柴を束ね、松明の芯になる丸太を通し、木端と呼ばれる薄くはいだ木材を沿わせて、最後に藤の蔓で縛って作るそうです。この藤の蔓も、藤の蔓なら何でも良いというわけではなく、地中にある蔓でないと使えないのだそうです。それを見つけるのは難しいらしく、鞍馬の皆さんはいつも藤の蔓のことを気にかけていらっしゃいます。一本の松明ができるまでに、多くの方の努力と、時間が費やされているのです。大松明は大人が2人から3人で担ぎます。その他には、中松明という中高生くらいが担ぐ60㎏くらいのもの、生姜雨声が担ぐ30㎏ぐらいの小松明、「トックリ」と呼ばれる幼児用の松明があります。
松明一つ作るにもこれだけ手間暇がかかるのです。他のことは推して知るべしです。鞍馬の人々がどれだけ火祭を大切にしていらっしゃるのかを感じられます。