ある日の夕方、子どもたちもほとんど帰ってしまって、2〜3人が園でお迎えを待っていました。そこへSちゃんのお母さんがお迎えに来られ、保育士の先生とにこやかに笑いながらしばらく話をしていらっしゃいました。Sちゃんもその近くで楽しく遊んでいます。とてもほのぼのとしていて、近くにいた私も温かい気持ちになりました。
出かけなくてはならなかった私は、そこから離れるのが残念な気持ちで園を後にしました。
しばらく歩くと、前の方に小さな女の子がひとりで立っています。こんな時間にどうしたのだろう?もしかして迷子?それとも園児さん?目を凝らしてみますが、よくわかりません。近づいて見ると園児さんでした。幼児クラスのCちゃん、今にも泣き出しそうな顔をして、ひとりで立っています。少し前にお母さんと一緒に帰ったはずなのにどうしたんだろうと思い、「どうしたの?おかあさんは?」と聞くと、泣き出しそうな声で、「Sちゃんに、これをあげたいの!」とお菓子を見せてくれました。よくよく聞いてみると、Sちゃんからお菓子をもらったので、自分もお返しにお菓子をあげたいと思っていたようです。
お母さんを探すと、近くに駐めた車の中で待っていらっしゃいました。乳児クラスの妹さんも一緒なので、お母さんは車を離れることができなかったのでしょう。
Cちゃんと一緒にお母さんの所へ行って、Sちゃんに合うために一緒に園にもどることを伝えてから、Sちゃんを待ちながら園にもどろう歩き始めました。すると前からSちゃんの姿が、ぱっと顔が明るくなったCちゃん「Sちゃーん」と呼びながら、走り出しました。Sちゃんも小走りに近づいてきて、驚いた表情で「どうしたの?」と聞いています。「これあげる」Cちゃんが差し出したお菓子を、嬉しそうに受け取るSちゃん。やっとお菓子を渡せてにこにこ顔になったCちゃん。2人並んで楽しそうに歩いて行きます。
Cちゃんをお母さんのところまで連れて行くと、お母さんは丁寧にお礼を言ってくださいました。
Cちゃんの優しい気持ちがとてもステキだと思いました。もっとステキだと思ったのはお母さんの姿勢です。「もう忙しいんだから早く帰るよ!」と叱って車に乗せるのではなく、Cちゃんの思いをしっかりと受けとめ、心配もあったでしょうけれどCちゃんを信じて、待っていらしたお母さんの姿勢に心を動かされました。そんな想いを込めて、お母さんに「ありがとうございます」とお礼をいいました。
我が子をまるごと信じて見守る。なんてステキなんでしょう。