『イノチェンティ レポートカード 11 先進国における子どもの幸福度―日本との比較特別編集版』を見てきましたが、レポートの「おわりに」の項目には、
異なる国々の子どもの幸福度を測定し比較することは、大きな課題と限界のある不完全な作業である。理想を言えば、こうした測定・比較には、次のような指標を取り入れていくことも必要だろう。
として、複数の項目が挙げられています。
▶育児の質
▶幼児教育の量ではなく質
▶子どもの精神・情緒の健康
▶家庭内暴力の経験(被害者あるいは目撃者として)
▶子どもへの虐待とネグレクトの広がり
▶子ども特有の環境(安全で監督されずに遊べる機会など)の質と安全性
▶養護施設で暮らしている子どもの幸福度
▶障がいのある子どもの幸福度
▶子どもの商品化/子どもの性の商品化
▶子どもが生活の中で触れるあらゆる種類のメディアとその影響
数値化して比較するのは難しそうです。
そして、幼児期の重要性についても言及しています
上記の課題のほかに、子どもの幸福度をモニタリングするために現在行われているほぼ全ての国際的試みおよび各国の試みには、もう1つ弱点がある。それは、子どもの生後数カ月から数年間にわたる発達面の幸福度に関するデータが欠落していることである。
子どもの幸福、健康、発達に対する社会の関心と保護が最も必要なのは、幼児期であるにもかかわらず、現在入手可能なデータはもう少し年上の子どもたちを対象としたものがほとんどなのだそうです。
幼児の発達に関する全国的なデータがほとんどないのはなぜか。それは、幼児期の発達の重要性に一般の関心や政治的な注目が集まるようになったのが比較的最近であることの表れかもしれない。また、ひとつには、幼児の生活に関するデータ収集は実現性に乏しく、個人の生活に立ち入ることになりかねず、公共政策との関連性に乏しい、という従来の考え方の反映とみることもできる。しかし、やはり、幼児の発達を測定・モニタリングする上で、広く適用可能な手段がないことも問題なのである。
とあります。
しかし、カナダやオーストラリアでは幼児の発達を定期的にモニタリングする取り組みも始まっているそうです。
モニタリングの方法としては、教師が5歳児全員についてチェックリストに記入する(正式な学校教育が開始してから2、3カ月以内)。このチェックリストには、幼児の発達の5つの領域に関する約100のチェッ ク項目がある。5つの領域とは、身体的な健康と幸福、社会的能力、情緒面の成熟度、言語・認知能力、コミュニケーション能力である。
集計や分析ができるデータがあることによって、親たちや地域社会、子どものための組織、学界、中央や地方政府が、全ての子どもに最良の人生の始まりを約束できるよう、より多くのことを知り、行動できるようになってきている。
幼児期の発達を支援することは単純な課題であるとか、また、リソースが見つかりさえすればあらゆる解決策が手に入るといった主張はすべきでない。しかし、幼児期に対し適切な投資を行うことは、子どもたちが現在、また将来にわたって豊かな暮らしを送り、長期的な社会福祉を実現する上で、極めて大きくかつ持続的な効果を上げることも明白である。
乳幼児教育の重要性は、世界的には早くから指摘されていて、乳幼児教育の質を高めるために様々な取り組みが行われています。みんなが幸せに暮らせる社会を実現するために、乳幼児がより良く育つことに力を注ぐ必要があるのです。
*太字は『イノチェンティ レポートカード 11 先進国における子どもの幸福度―日本との比較特別編集版』よりの引用です