PISA調査では、得点や習熟度レベル別といった調査だけではなく「学習の背景要因」も調査しています。
生徒を対象に生徒自身及び学習環境等に関する情報を収集する生徒質問紙について は、2012 年調査ではじめて、質問項目の組み合わせによって 3 種類で実施。各生徒は そのうちの 1 種類の質問紙に回答。また、校長を対象に学校に関する情報を収集する 学校質問紙は、従来通り 1 種類。それぞれ回答時間は約 30 分程度。
という調査方法で調査しています。
「生徒の数学的リテラシー得点に影響を与える動機付け・自己信念」
生徒質問紙において、
1. 数学における興味・関心や楽しみ
2. 数学における道具的動機付け
3. 数学における自己効力感
4. 数学における自己概念
5. 数学に対する不安
の5つの要因に関する質問をした。日本の生徒の肯定的な回答の割合は OECD平均よりも少なく、65か国中でも少ないが、2003年との比較では「数学における興味・関心や楽しみ」に関する全4項目、「数学における道具的動機付け」に関する全4項目、「数学における自己効力感」に関する全8項目中6項目で、肯定的な回答の割合が増え、統計的な有意差がある。
とまとめられています。しかし、5つの項目全てについて「肯定的回答が、OECD平均よりも少なく、65ヵ国中でも少ない」というのはちょっと困ったことなのではないでしょうか。「数学における興味・関心や楽しみ」指標や「数学における道具的動機付け」指標、「数学における自己効力感」指標では2003年よりも肯定的な回答が増えてはいますが、まだまだ低い状態です。全体として成績が良いのにもかかわらず、興味・関心や楽しみが少なかったり、道具的動機付けや自己効力感、自己概念が低く、不安も小さくないというのは、どういうことなのでしょうか。テストに出た問題は解けるけれども、興味関心を持って楽しんで取り組んでいるのではない。そうであれば、義務感ややらされ感で数学を学んでいるのでしょうか。ここの興味・関心、楽しみ、自己効力感などの動機付けや自己信念がしっかりとしていて自信をもって取り組むことができることが大切なのだと思いますが。
*太字は『イノチェンティ レポートカード 11 先進国における子どもの幸福度―日本との比較特別編集版』よりの引用です