金銭的剥奪は、子どもの相対的貧困率と、子どもの貧困ギャップという指標を用いて表されましたが、物質的剥奪は子どもの剥奪率という指標で表されます。相対的貧困率は子どもたちが生活している社会での相対的な地位がわかりますが、実際にどのような生活を送っているのかということを表すことはできません。そこで、物質的剥奪(子どもの剥奪率)という指標を用いて測られます。
各国における1歳〜12歳子どもについて、次の8品目のうち2つ以上が欠如している子どもたちの割合によって測られています。8品目とは
1.子どもの年齢と知識水準に適した本(教科書は除く)
2.屋外レジャー用品(自転車、ロー ラースケートなど)
3.屋内ゲーム(子ども1人につき 1つ以上(知育玩具、積み木、盤ゲー ム、コンピューター・ゲームなど)
4.修学旅行や学校行事の参加費
5.宿題をするのに十分な広さと照 明がある静かな場所
6.インターネットへの接続
7.新品の衣服(中古品を除く)
8.誕生日、命名日、宗教行事など のお祝い
です。
これらのうち2項目以上が欠如している子どもの割合で比較しています。日本はこの割合が7.8パーセント31ヵ国中チェコ・ベルギー・スペインに次いで18位です。日本で欠如している割合がもっとも高い項目から順に並べると次のようになります。
・インターネットへの接続(0.11%)
・宿題をするのに十分な広さと照明がある静かな場所(1.0%)
・新品の衣服(中古品を除く)(0.07%)
・屋内ゲーム(子ども1人につき 1つ以上(知育玩具、積み木、盤ゲー ム、コンピューター・ゲームなど)(0.03%)
・屋外レジャー用品(自転車、ロー ラースケートなど)(0.02%)
・誕生日、命名日、宗教行事など のお祝い(0.02%)
・修学旅行や学校行事の参加費(0.01%)
・子どもの年齢と知識水準に適した本(教科書は除く)(0.01%)
「インターネットへの接続」は、子どもが犯罪に巻き込まれるきっかけになる可能性が高いという理由から、日本ではあまり推奨されていないように思うので、欠如率が高いのでしょうか。宿題をするのに十分な広さと照明がある静かな場所が欠如している子どもが1%もいるのですね。新品の衣服が欠如しているというのは、「まだきれいだけれど、サイズが合わなくなくなったから、どうぞ。」と知り合いに差し上げるなどのリサイクルが行われているから、3番目になっているのでしょうか。それとも、もっと深刻な話なのでしょうか。
レポートの所見には、
▶物質的剝奪は、各国の総合的な経済発展水準によって大きく異なる。
▶「長年にわたって高所得を維持してきた」国の多くでは物質的剝奪率が5%に満たない。一方、ラトビア、ブルガリア、ルーマニアなどの非OECD加盟国の物質的剝奪率ははるかに高い。
▶日本の子どもの剝奪率は7.8%で、ほとんどの「長年にわたって高所得を維持してきた」国より高い。
としています。
「長年にわたって高所得を維持してきた」国であるはずの日本で剥奪率が高いのはどういう理由なのでしょう。不思議です。