『イノチェンティレポートカード11先進国における子どもの幸福度〜日本との比較特別編集版』では、31ヵ国の子どもたちの状況を「物質的豊かさ」「健康と安全」「教育」「日常生活上のリスク」「住居と環境」の5つの指標を用いて比較しています。
日本が5つの分野のうち、「物質的豊かさ」の項目が一番低いというのにはちょっと驚きです。物が豊かになって心の豊かさが失われ、物の豊かさより、心の豊かさが大切といわれて久しいので、物は豊かなのだと思っていましたが、物質的豊かさも31ヵ国の平均を下回っているなんて、にわかには信じられませんでした。では、物質的豊かさは、どのようにして計るのでしょうか。
この調査で物質的豊かさをはかるための構成要素は「金銭的剥奪」と「物質的剥奪」の2つです。評価の指標として、金銭的剥奪は「子どもの相対的貧困率」と「子どもの貧困ギャップ」。物質的剥奪は「子どもの剝奪率」という指標でそれぞれ表わされるそうです。
子どもの相対的貧困率
金銭的剝奪の評価に用いられている「子どもの相対的貧困率」とは、世帯所得をもとに国民一人ひとりの所得を計算して順番に並べ、真ん中の人の所得の半分に満たない人の割合です。それぞれが属する社会の大半の子どもたち が「当然のこと」と捉えている利益や機会を得ることができない子どもたちの割合を示していて、単純な購買力よりも国内の所得格差に注目する指標であるため、日本など比較的豊かな先進国でも高い割合が示されるそうです。日本は 31 カ国中 22 位にランキングされており、これは子どもの相対的貧困率で見た場合、先進諸国の中でも子どもの貧困率が最も高い国 の1つであることを示しています。
子どもの貧困ギャップ
子どもの相対的貧困率は、相対的貧困ラインより下の生活をしている子どもの割合を示していますが、 子どもが貧困ラインのどれほど下にいるのかという、子どもの相対的貧困の深刻度はわかりません。「子どもの貧困ギャップ」は、貧困世帯の所得がどれほど、貧困基準から離れているか、という指標です。つまり、貧困の深刻度を表しています。この指標では、日本は31カ国中26番目。日本では、貧困の子どもが多いと同時に、貧困の深刻度も高い、ということになります。
日本では、所得が相対的貧困ライ ン未満の世帯で暮らしている0〜17 歳の子どもの割合は約 15% で、 その所得は相対的貧困ラインより 30% 以上少ない。一方、オランダ やオーストリアでは、相対的貧困ラ イン未満の世帯で暮らしている子ど もの割合は6〜8% で、その平均 所得は貧困ラインより約 16% 少な いのです。
驚きの数字です。日本では、格差が広がっているということ。そして、貧困にあえいでいる子どもたちが増えているということは間違いないようです。