鬼が残していったパンツや帽子はあるし、鬼からの手紙はあるし、そうこうして鬼のイメージを思いっきり膨らませて迎えた節分、鬼が来るかもしれないと思うと、朝からどことなく落ち着かずそわそわしている子もいました。
2階で『おなかのなかに おにがいる』(作:小沢孝子 絵:西村 達馬)という絵本を読んでもらったり、5歳児達が鬼に扮してみんなでまめまきをして楽しんでいると、突然、どこからともなく「オレが手紙に書いたことを守っているか?今から確かめに行くからな!」と大きな声が保育室中に響き渡りました。次の瞬間、どこから来たのか太鼓の音と共に黒い鬼が乱入してきました。「早く豆を投げて」と促す先生。しかし子どもたちはそれどころではありません。黒鬼がこわくて逃げているうちに赤鬼まで登場します。赤鬼は誰かをさらってゆこうとしているかのように、子どもたちを引っ張ってゆこうとします。
鬼がきたらやっつけてやる。といっていた男の子は誰よりも早く逃げていました。キックやパンチどころか、洋服をつかまれて連れて行かれそうになり、青くなって逃げてきていました。ところが、普段はおとなしい子なのに、果敢におにに豆をぶつける女の子もいますし。怖さに絶えながら、鬼の後ろに回り込んで豆をぶつける男の子もいました。普段、大きなことを言っている子はこういうときになると、からっきしダメで、いつもおとなしい子が平気で立ち向かっていったりすることがあります。
突然「キャー」という声が響き、何事かと思って声の方を見てみると、5歳児の担任の先生が、鬼に腕をつかまれ、引きずられるように連れて行かれています。「だれか助けて−!」大好きな先生の声に、助けに行かなくては、でもこわすぎる。集団から飛び出して助けに行こうとする子はなかなか現れません。すると5歳児Kちゃんがひとり、引きずられてゆく先生の足を持って引き戻そうとします。目と鼻の先には、黒鬼と赤鬼がいるのにです。なんて勇敢なんでしょう、後ろから豆を投げつけに行く5歳Yくんも、こわいのを我慢して、うまく鬼の視界から外れながら、豆で攻撃します。なかなかの頭脳プレイでした。そして、なんと2歳児のYくんが、鬼に引きずられている先生を助けに飛びだしてゆきました。その頼もしい姿と、まさかの展開に職員一同驚愕の瞬間でした。
子どもたちのいろいろな面が見られたまめまきでした。