園長ブログ

アスペルギルス オリゼ

2014/01/27

麴カビ(麹菌)アスペルギルスオリゼ。日本人は1,000年以上も前からこの微生物の力を使って酒を造ってきました。椿の灰を使って麹菌が育ちやすい環境を工夫もしていたように、酒造りの職人さんが最も大切にするのは麹なのだそうです。小さな小さな微生物、麹菌の力を借りて酒を造る。そうしてできた自然の恵みを神に捧げ人も楽しむ。自然に感謝し神を尊ぶ生活があったのでしょう。その麹菌と大豆が出会って醤油ができたのは室町時代だそうです。そう考えると、和食の味の基本は麹が支えてきたといえます。

こうして、私たちの祖先は麹菌を育て伝えてきました。麹を育てる種麹屋さんの仕事の中心は良い麹をより分けて育てること。ですから良い性質のカビを守ることだけに仕事の大半を費やすそうです。経験から色や胞子のつき方を見るだけで、菌の善し悪しがわかるのだそうです。そうやって長い年月をかけて、良い性質の麹菌を残してきました。

こうして守り育ててきた麹菌は、日本にしかいないそうです。NHKスペシャル「和食 千年の味のミステリー」ではアスペルギルス・オリゼ(麹菌)を研究している東京大学 北本勝ひこ教授の説を紹介していました。

アスペルギルスオリゼに似たアスペルギルスフラブスという菌がいます。同じように米を分解して糖分を作り出しますが、異なるのは毒を作ってしまうところです。このフラブスを日本人はうまく家畜化してアスペルギルスオリゼを生み出したと北本教授は考えているそうです。

もともと種麹屋は室を使ってフラブスを育てていました。熱を加えるなどして毒性を押さえたフラブスから味の良い酒を造るフラブスを選んで増やしました。室には外敵がいなかったため、その中から毒素を作るDNAを持たないカビが出てきます。その中から糖分をより効率よく作るカビを、より分けて育ててゆきます。そして、突然変異が起こり複数の核を持つアスペルギルスオリゼが生まれた。この菌を使うといつも安定しておいしい酒が造れるので、種麹屋はこのカビを増やしていったのだという説です。

昔の人は検査技術などがないなかで、どのようにして安定して糖を作る能力が高い良い胞子を選び、守り育ててきたのだろうと不思議に思います。自分の五感をフルに使って対象に寄り添い、理解しようとしたのかと想像します。そうやって心で寄り添い相手を理解しようとすることで、麹菌の良いところをどんどん伸ばすことができたのではないでしょうか。

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