発酵は微生物が働くことで進みます。腐敗も同様に微生物が働くことで進みます。どちらも様々な微生物がいろいろなものを分解して精一杯生きている自然の働きですが、人間にとって有用か否かで発酵とも腐敗とも言えるのです。どこが違うかといえば、どんな種類の微生物が、どう働いているかだと思います。人間が自然の力をかりて人間に有用な発酵を促し、その成果である発酵食品をいただく。そこに人が関わることが多いということも発酵の特徴かもしれません。
ですから、人が果たす役割も大切です。微生物のように直接材料を分解することはできませんが、微生物が働きやすいような環境を整えることはできます。材料を冷たい水で洗わなくてはならないこともあるでしょう。米や豆を煮て柔らかくすることもそうですし、かき混ぜることで、好気性の菌に酸素を届けてあげることも必要かもしれません。
人間にしかできないことをしっかりやる。微生物にしかできないことは微生物を信じて任せる。まさに共同作業です。人間にできることの中には、楽しく作業をするということがあるそうです。日本酒を造る杜氏さんたちはお酒を造るときにいろいろな歌を歌いながら行います。それには作業の辛さを緩和したり、作業に当たる人の息を合わせたりする役割がありますが、これは裏を返せば、楽しく作業をするということです。この楽しい雰囲気を作ることが人間の役割のひとつなのかもしれません。
たくあん漬けの話から発酵のことになってしまいましたが、発酵に必要なことは、他にも当てはまることがあるような気がします。様々な微生物がそれぞれの役割を果たし、精一杯働くことで、おいしい発酵食品ができるということです。みんなそれぞれ自分の役割を持っています。それぞれが楽しくその役割を果たす事ができれば、自然とハーモニーが生まれ、みんなが良くなってゆけるのです。