スリランカの舞踊を通してより近くなれたところで、スリランカの皆様には2グループに分かれて保育に参加していただきました。その日の保育は、2歳と3歳が室内でリズム遊び、4歳と5歳が向かいの山へ散歩です。
向かいの山は薬王坂、薬王峠と呼ばれる山越えの道があります。その昔、伝教大師最澄がこの坂を越えて比叡山に向かわれ、その際に薬師如来を刻まれたとか、山を越えてゆかれる伝教大師様の後ろ姿が薬師如来のようだったとかいわれていることからこの名がついたそうです。この峠を越えると静原というところで、昔は鞍馬静原間の行き来はこの峠を通っていました。現在ではトレッキングコースの一部となっていて、トレッキングを楽しむ人がよく歩いています。
子どもたちは、山の中腹にお祀りしてあるお地蔵様にお参りをしようといって、出発しました。山道はところどころ石がごろごろしているので、決して歩きやすいというわけではありません。子どもたちは慣れたもので、早い子はどんどん登ってゆきます。ゆっくり歩く子は道ばたの蜘蛛の巣に見入ったり、ドングリを拾ったりしながら歩きます。途中で先頭が止まって待っているのでどうするのかと思ったら、木につかまりながらでないと登れなかったり、枝をくぐったりする道なき道コースで行くのか、普通の道で行くのかを相談して決めようということでした。子どもたちは道なき道コースを選びました。チャンダシリ師の履き物がしっかりしたものではなかったので心配になり、普通の道で行きますかと尋ねると、子どもたちと一緒に行きたいおっしゃってくださり、まるで登山のような散歩に同行してくださいました。歩きながらも子どもたちの姿にしきりに感心していらっしゃったので、スリランカでは山に入ったりすることはないのかと聞くと、コブラがいて危ないからできないとのことでした。
山腹のお地蔵様までたどり着き、お参りを済ませて近くでそれぞれに遊びました。苔の感触を楽しむ子、倒木の皮をはいで中になにかいないか探す子、きのこを見つけている子、子どもたちは何かしら自分で遊びを見つけて様々に楽しんでいます。やはり自然の中では子どもたちはいきいきとします。
真っ青な空からは柔らかくなった秋の光が降り注いでやさしい木漏れ日を作り、涼しくさわやかな風が通り過ぎ、自分自身も優しい気持ちになれました。帰り道、普段はおとなしくてあまり話さない女の子が、ひっきりなしに私に話しかけてきます。山は人の心を開くのかもしれません。
スリランカの皆さんは、まさかこんな散歩だとは思っていらっしゃらなかったので、さぞかし驚かれたのではないかと思いますが、園に帰ってチャンダシリ師に感想を伺うと、とても良かった、すばらしかったと繰り返していらっしゃいました。なにか感じていただけるところがあったのだと思います。