徘徊模擬訓練の一番のポイントは、徘徊しているかもしれない人にどのように声をかけるかです。急に後ろから声をかけたり、複数の人で取り囲むようにしたり、早口で追い立てるように話したりすると、驚いてしまうことがあるので、近づくのは1人で前から、散歩途中に挨拶するように、あくまでも自然に声を掛けることが大切です。できるだけ不安を与えないようにする必要があるのです。そのためにも、例えば、自分より背の低い人であれば、相手の目線まで姿勢を低くするとか、穏やかにゆっくり話すとか、子どもに対するときと同じような接し方をするのが良いようです。声のかけ方を学ぶのに、福祉施設の方が寸劇でわかりやすく説明してくださいました。2人で演じてくださったのですが、リアルな部分もあり、少しおもしろくしてある部分もあり、とてもわかりやすく楽しめました。あとは話を受けとめてあげて、その人の希望に添うように、かつ危険がないよう自宅に帰れるように考えるのですが、全部自分で解決しようとしてしまうのではなく、様々なところに助けを求めることが大切だと聞きました。警察、消防、行政、地域包括支援センターなど様々な機関とその役割、連絡方法をを知っている、こういうときに役に立ちます。
一通り学んだ後は、いよいよ実践です。北と南の2コースに分かれて行われました。徘徊者役の人が、決まったコースを歩くので、私たちのようにあらかじめ予習した人たちが、声を掛けるのです。実際に声を掛けるのは少しどぎまぎするものです。予習をしたばかりで、訓練だとわかっていても、どぎまぎするのですから、本当にそういう人に出会ったときにちゃんと声が掛けられるのか不安になりました。私たちはあらかじめ訓練だと知っていますが、コンビニエンスストアで買い物中の人や、畑仕事をしている人など見ず知らずの人に、徘徊者役の人が「家に帰りたいんやけど、家がどこかわからへんねん。」といった声がけをするというシュチュエーションもあります。多くの人が、親切に対応してくださったと聞きました。もちろんそうでもないケースももちろんあります。歩きながら、ご自宅の玄関を掃いていらっしゃる方に、徘徊者役の人が「自分の家がわからない」と声を掛けられたときに、掃除をしていた方がとても怪訝そうな顔をされたこともありました。それはそうかもしれません。何も知らなかったら、変なおじさんが変なことを言っていると思うかもしれません。だからこそ、認知症や徘徊ということをできるだけ多くの方がよく知っていると良いのでしょう。そういったことも今回の訓練の目的の一つだったのですから。