アンパンマンは正義のヒーローです。正義のヒーローというと、強くて悪者をやっつけるかっこいい存在というイメージがありますが、アンパンマンは全く違います。顔を食べさせれば弱くなるし、顔が濡れると力が出ません。そんなときはジャムおじさんに顔を取り替えてもらわないとだめなので、「ジャムおじさんを呼んで」と泣いちゃったりすることもあります。作者のやなせたかしさんはそんなアンパンマンを世界最弱のヒーローと呼んでいます。
テレビの番組には子ども向けのヒーローものがたくさんあります。たいてい戦うのが強くて悪者をやっつけるというストーリーが展開します。ところが、アンパンマンはいざというときは強いのですが、弱いときもあります。いつも強くてよりも、なんかその方が親しみが持てるように思います。いつも強い人なんていませんものね。普段は普通の人だけれども、いざとなったら誰かのために強くなって誰かを助けるのです。
いつもアンパンマンにやられてしまうばいきんまんも、どことなく憎めない、というよりもかわいらしいキャラクターだと思います。「アンパーンチ!」とアンパンマンにやられて「はひふへほー!」と飛んでいってしまいますが、次にはまた登場していたずらをする。結構どぎついいたずらもしますが、なぜかあまりいやみが無く、アンパンマンと良いコンビという感じがするのです。
一つは「正義ってなんだろう?」ということです。勧善懲悪を否定するわけではありませんが、正義は立場が変われば変わりますし、時代が変われば変わることもあります。もちろん変わらないこともあります。やなせたかしさんは、飢餓は誰にとっても最大の危機で、おなかがすいて死んでしまいそうな人を助けることは、誰にとっても正義なのではないかとおっしゃっています。だからアンパンマンの正義はおなかのすいた人を救うことなのだそうです。
やなせたかしさんのことですから、もっと深い意味が込められていると思いますが、アンパンマンのことを書いていたら、こんなところに思いが広がりました。