ある朝歩いていると、桜の幹にとても小さいけれども輝くような朱色を見つけました。何だろうと思って近づいてみると、体調1センチから2センチの虫がしがみついています。おしりの部分はどっしりとしていて、黒っぽい色に細かな模様がついているのですが、それ以外の頭や足、胴体は美しい朱色をしています。
しばらく見ていると近くに同じような虫がたくさんいるのに気づきました。仲間の虫たちにすぐに気づかなかったのは、他の虫の頭、足、胴体は黒かったからです。なぜ同じ姿をしている虫なのに一匹だけが美しい朱色をしているのだろうと不思議でした。朝日に照らされ、透明感のある何ともいえない美しい色です。なんの虫かもわからずその場を離れました。
2時間ほどして虫などに詳しい知り合いに会ったので、もう一度一緒に見に行ってみると、あの美しい朱色の虫はいませんでした。その代りほとんど黒に近い赤色のがいます。色が変化したのだと気づきました。
知り合いにそういうと、これはヨコヅナサシガメという虫で、毛虫などの他の虫を捕まえて体液を吸って生活している。赤かったのは脱皮してすぐだったからだと教えてくれました。
知らないって、怖いですね。事実を知ってみると何でもないことだったりします。突然変異か?新種か?と大げさに考えていた自分が可笑しくなりました。
でも、朱色の美しさといい、2時間ほどで色が変わることといい、自然の営みの美しさと不思議さを思いました。