京都産業大学むすびわざ館ホールで行われた声明の公演、今年の演目は「六道講式」(二十五三昧式ともいわれます)です。六道とは、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天の輪廻転生する世界をいいます。ちなみに二十五三昧の二十五は二十五有といって、輪廻転生する生死の世界を欲界・色界・無色界の三つに分け、それを更に25に分けたものです。六道講式は、恵心僧都源信が始めた念仏講会二十五三昧式において二十五有を破する三昧から起こったものであり、その二十五有を六道に約し、六道を解釈した式文を講読することを中心とした法会です。要するに、地獄とは、餓鬼とは・・・と説明するように語ってゆくことが中心になっています。独特の節回しを付した日本語(和文)で語られることが特徴で、「平家琵琶」や「浄瑠璃」「謡曲」などのルーツではないかという説や、後の日本文学に大きな影響を与えたという説もあります。
昨年の演目は「胎蔵界曼荼羅供」の一部を紹介するものでした。胎蔵界曼荼羅供は、胎蔵界曼荼羅を供養する密教法要で、声明曲はゆったりしたものから、リズミカルなものまで、変化に富んだものですが、それに比べたら式文を読むことが中心の六道講式は少し単調に感じた方もあったかもしれません。
「輪廻の世界を彷徨っている間はどんな報いを受けるかわからない。中でも最も忍び難いのは地獄の苦しみ、堪え難いのは餓鬼畜生の報いを受けることだ。三界の獄縛は一つも楽しむべきことは無い。」という前置きがあり、まず、地獄の様相が語られます。地獄には炎が渦巻いており、涼しい風を希っても炎が骨を焦がし、冷たい水を願っても熱湯におぼれる。泣いても涙は落ちないなぜなら猛火が眼に満ちているから、叫んでも声は出ない、鉄の珠が喉に入っているから。など、かなりリアルに表現されています。地獄絵というのがありますが、地獄絵の一部が浮かんで来そうです。
「悪いことをしたら地獄に行く」と昔から言われているのが、妙に心に響きます。