保育所保育指針総則の保育所保育の目的には、「保育に欠ける子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図ることを目的とする児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない。」とあり、その解説には「子どもの最善の利益」と「最もふさわしい生活の場」について取り上げられています。
子どもの側から保育園の役割を考えてみると、子どもにとって家庭と保育園の違いはなんでしょうか。
最も大きいのは、子ども同士が関わることのできる子ども集団という環境の有無ではないでしょうか。少子化が進んだことや子どもたちの遊び方の変化などの影響で、子どもが地域で群れて遊ぶ姿があまり見られなくなりました。私が子どもの頃は、幼児から小学生くらいまでの子どもたちがよく外で遊んでいました。遊びの内容によっては自然といろいろなグループに分かれるなどしていたように思います。こういった異年齢のいろいろな子どもが同一集団の中で入り交じって遊ぶというのが、普通に見られる光景だったのではないでしょうか。その中で、子どもたちはそれぞれに自分の役割を果たし、相手の立場や気持ちに心を運び、相手を思いやり、自分の意見を述べながらも、折り合いをつけてゆくことなど、人との関わり方を学ぶのです
ところが、地域にそういった環境がなくなってしまった現代では、地域の遊び場が果たしていた「様々な子どもが関わって遊ぶ」環境を提供することが、保育所の役割、しかもかなり重要な役割となっているのだと思います。子ども同士の関わりの中でこそ子どもは育つのです。そして人と関わる力を養ってゆくのです。
子どもが様々な人と出会い、関わり、心を通わせながら成長していくために、乳幼児期にふさわしい生活の場を豊かにつくりあげていくことが重要であり、そうした役割や機能が今日、保育所にはますます求められているといえるでしょう。 (保育所保育指針解説)