「あー!おさるがいる」子どもたちの声が聞こえてきたので行ってみると、猿が一頭、畑のフェンスの上をうろうろしています。まわりに他の猿は見当たらなかったので、群れからはぐれたのかもしれません。かなり大きな猿でした。夕方子どもたちが園庭に出る前だったので、いつも通り園庭で遊ぶのか、猿を用心して室内で遊ぶのかを決めなくてはなりません。しばらくして猿の姿が見えなくなったので、子どもたちは園庭で遊ぶことにしました。野生の猿は特別なことがない限りは人間に近づいて来ることは少ないのですが、園庭に下りてきては困るので、私が畑で監視することにしました。畑に行ってみると。猿は畑の反対側の斜面にある栗の木に登って、一所懸命に栗を食べようとしています。しばらく見ていましたが、猿は栗に夢中です。まだ、熟していないので、食べようにも食べられないのかもしれません。猿も食べるものがないのでしょう。
杉や檜を植林した山が多くなって、野生動物の食料が少なくなっていると言われています。植林されたのは、戦後の拡大造林という政策で天然林が伐採され、有用とされるスギやヒノキを植林することが行われました。こうして雑木や広葉樹が少なくなったことで、動物たちの食べ物がなくなってきたといわれています。そして、たくさん植林がされたものの木材の需要が激減し、間伐や枝打ちなどの作業もされなくなり、新たな森林荒廃が進んだそうです。人間が、いろいろなことのつながりを考える事なく、目の前の自分の都合ばかりを考えてしまった結果かも知れません。
鹿や猿も食べるものがなくては、たまったものではありません。危険を冒しても人間の近くに来るしかないのでしょう。
自然の絶妙なバランスを保ちながら、そのなかで人が暮らしてゆくこと、自然の中で暮らさせていただいていることから発想した方が良さそうです。自然が先にあって、その後に人間がついて行く。謙虚な姿勢を忘れないようにしたいものです。ただし、自然は美しかったり優しかったりするだけではないので、その点も含めて長いスパンで考えられればと思います。