日本は高テクスト文化で、逐一ことばで説明しなくても話が通じやすい文化だと言われているそうです。職人さんが技を伝えるのに、逐一説明したりはしません。もちろんことばで説明して習得できるものではないということもあります。「見て覚えろ」とか「技を盗む」ということが言われます。そうやって技を身につけるには、習う方の弟子が「できるようになりたい!」という強い意欲が必要です。意欲に裏打ちされた努力の積み重ねが技を身につけることに繋がります。親方はそんな弟子をうまく励ましたり、たしなめたりしながら、適切な距離感を持って見守ることで育てたのだと思います。ところが、最近はそうではないことがあると聞きました。ある職人さんがおっしゃっていたのは、「最近の若い人は、逐一ことばで説明して欲しいようで、説明をしないと何も教えてくれないと言ってやめてしまう人が多い」ということでした。そして、「説明したら説明したで、わかったような気になってしまって努力をしない。実際に技を身につけようとしたら、自分で練習して技を身につけるしかないのだけれど・・・」ともおっしゃっていました。
そんな話を聞いて、子どもの頃から、あれもこれも大人が主体となって教え込むことで、かえって知りたい、やってみたいという好奇心や探求心、学ぼうとする意欲を奪ってしまっているのかもしれない。と思いました。学ぶ方が主体的に学ぼうとしない限り、なかなか身につくことはありません。ですから、子どもの時に育てておきたいのはこの、「意欲」なのです。
逐一説明することにも良い面と悪い面があるということが、さきほどの職人さんの話からもわかります。全て説明すると、頭でわかった気になって、習得の努力を怠ってしまうこともありますし、全く説明しないと、何も教えてくれないと思ってしまう。うまくバランスをとりながら、育てる必要がありそうです。