国民総幸福量(Gross National Happiness, GNH)ということばがあります。これは国民全体の幸福度を示す尺度です。国民総生産(Gross National Product, GNP)が「一定期間に国民によって新しく生産された商品やサービスの付加価値の総計」であり、国内総生産(Gross Domestic Product、GDP)は、「一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額」で、両方ともその国の経済的な豊かさを計る指標です。この物質的な豊かさをお金という尺度で測るのに対して、GNHは、精神面での豊かさを「値」として、国民の幸福度を測ろうとするものです。
1970年台にブータン王国の国王ジグミ・シンゲ・ワンチュクは、国家の問題が経済成長だけに特化されることを心配し、ブータンで優先するべきなのはGNPやGDPではなくGNHだと決めました。そして、国の発展の度合いをGNHで測ることを提唱したといいます。
この考えの基本には、人間社会の発展とは、物質的な発展と精神的な発展が共存し、互いに補い合って強化していったときに起こるものだという考え方があります。
このGNHはそれまでブータンでは伝統的だった価値観をわかりやすく整理したもので、
1. 公正で公平な社会経済の発達
2. 文化的、精神的な遺産の保存、促進
3. 環境保護
4. しっかりとした統治
というGNHの4つの柱のもとに
1. 心理的幸福
2. 健康
3. 教育
4. 文化
5. 環境
6. コミュニティー
7. 良い統治
8. 生活水準
9. 自分の時間の使い方
の9つの分野にわたって、「家族は互いに助け合っているか」「睡眠時間」「植林したか」「医療機関までの距離」など72の指標があるそうです。
人々のしあわせを見える化するということなのですね。