バレエ「ドン・キホーテ」は、全3幕5場プロロー付という構成になっています。プロローグでは、騎士の武勇伝を読みすぎたドンキホーテが自分が物語の主人公になったと思い込み、サンチョパンサを連れて旅に出るシーンです。ドンキホーテが物語の世界に入り込み自分が騎士だと勘違いする感じが良く表されていますし、サンチョパンサのちょっとコミカルな動きも楽しく感じます。
プロローグに続く第1幕は、バルセロナの町の広場でいろいろな人が陽気に騒いでいるシーンからはじまりますが、幕が開くとそこにはたくさんの人がいるところがとても華やかさを感じさせてくれます。宿屋の看板娘キトリとその恋人である床屋のバジル、キトリをお金持ちの貴族ガマーシュに嫁がせたいキトリの父ロレンツォ、貴族ガマーシュ。そんな人たちがやりとりをしているところに登場するドンキホーテとサンチョパンサ。進んでゆくストーリーとそれを表現する踊りはもちろんすばらしものです。しかし、私が興味を持ったのは、舞台の両脇にいる町の人々が思い思いにいろいろなことをしているところです。二人で楽しそうに話している人、飲み物を飲んでいる人、コックさん、いろいろな人がいるのですが、それぞれに動いている姿から、町の広場という感じが伝わってきます。第2幕の居酒屋のシーンでも、ウエイターを呼んで飲み物を注文している人がいたりします。いろいろなところでいろいろな人がいろいろなことをしているので、どこを見て良いかわからなくなるのですが、こういった人たちが何をしているのかを見るのが好きです。舞台の中央で繰り広げられる物語の展開や美しい踊りがすばらしいことは言うまでもありません。ですから余計にどこを見て良いのかわからなくなります。
会場で販売されていたパンフレットを読んでいたらそんなことが書いてありました。
クラッシックバレエの基礎を築いたといわれるマリウス・ブティパが、「ドン・キホーテ」のバレエを創作したそうですが、後にアレクサンドル・ゴルスキーが舞台を自然にいきいきと見せるために演出に工夫を凝らしたようです。ゴルスキーの演出で最も優れているのが群舞だといわれているそうですが、「ゴルスキーは群舞のひとり一人にそれぞれの動きと目的意識を与え、シンメトリーではない生きた舞台を目指した」そうです。ゴルスキーの狙ったところに興味を惹かれた私でした。