サンクトペテルブルグのマリインスキー劇場での初めてのバレエ鑑賞。バレエについて何も知らず、どちらかというと、退屈なイメージしか持っていなかった私の目の前で幕が開きました。一番印象に残っているのは、幕が開いた瞬間のステージの華やかさというか、きらびやかさが圧倒的な質感と量感をもって目に飛び込んできたことです。
プロローグの騎士道物語を読みふけるドンキホーテのところにサンチョパンサがやってくるシーンがあったのだと思うのですが、どうも、第一幕のバルセロナの港の広場に人々が集まって、それぞれに楽しんでいる場面の印象が強いのです。たくさんの人たちが陽気に過ごしている様子が、心に直接飛び込んできた感じで、「なんやこれは!」と思ったのを覚えています。
宿屋の看板娘キトリと、その恋人床屋のバジルをはじめいろいろな人が踊ります。大勢で踊るときは、ぴったり合った動きも美しいですし、少しずつ違う動きをするところも、動きにハーモニーが感じられます。そして、広場に集まった人たちが、思い思いにいろいろなことをしている姿が、なぜかとても自然で楽しそうだと思ったのを覚えています。
また、視覚的な美しさに加えて、オケピットから響き渡るオーケストラの分厚い生演奏がおなかに響いてくるのです。
それまで私が持っていたバレエに対するイメージは一瞬にして完全に変わってしまいました。その後はどんどん舞台に引き込まれてゆきます。始めて目にする舞台のきらびやかさと、すばらしい音響、劇場全体の雰囲気とも相まって夢中で見入っているうちに場面はどんどん進んでゆきました。
途中の休憩時間に気がついたのですが、終演は夜遅くになるにもかかわらず、子どもの観客が多いのです。かわいらしく正装してマナー良く鑑賞していました。小さいころから本物に触れ、本物を五感で感じることの大切さを改めて思いなおしたのを覚えています。
初めてのバレエとの出会いがとてもすばらしかったので、これはなんとかして子どもたちに見せたい。できれば園児達に見せたいと思いましたが、それはどう考えても無理なので、せめて家族で鑑賞したいと思ったのでした。