発達に偏りのある子どもについて、発達障害などの診断名をあまり固定的にとらえることなく、一人ひとりの発達をしっかりと見据え、発達に応じた環境を整え、多くの子どもたちと関わり合うことを通して、それぞれの子どもが発達してゆくことに重きを置いた保育実践を発表してくださいました。そうする中で、子どもたちは自ら育ち、卒園する頃には発達の偏りも少なくなってくるということを多数の実例を示して発表してくださったのでとても説得力がありました。
発表が終わって、質疑応答の時間には、多くの質問や意見が会場から出されました。その中から小児科のお医者様のご意見を紹介します。まずおっしゃったのが、「発表者と同じ感想を持っている。」です。そして、「3歳3カ月検診で引っかかっても、4・5歳で症状が見られなくなることはよくあることだ。ところが一旦診断されると、日本ではそれが固定化するような傾向があり、問題だと思っている。」とおっしゃっていました。
さらにつづけて、「特別支援をすることが必要だと言われるのが日本では主流になっているが、それは危ない。特別支援は特別していないことがとても良いと思う。」ともおっしゃったのには少し驚きました。発表者の伝えようとされていたことと同じことを、小児科のお医者様がおっしゃったのです。そして。「(特別支援をする事によって)大人側から見て一面が改善したように見えても、それが、発達全体にどう影響するのかはわからない。」ともおっしゃっていました。
このお医者様の話を聴いて思ったのが、私たち大人には、「子どもを丸ごと信じる」という前提があるのか?」という問いを突きつけられているのではないかということです。たとえ、発達に偏りがあったとしても、その子がその子らしく育ってゆく事ができる。ということを私たち大人がどれだけ信じているでしょうか。ここが足りないから補う。できないからできるように訓練する。もちろんそれも大切だとは思いますが、それだけではないように思うのです。子どもは訓練するために生まれてきたのではないと思います。
その子のいのちの輝きはどこで発揮されるのか。それを見つけ、磨くお手伝いをする。それが大人の役割なのではないでしょうか。