園長ブログ

赤ちゃん学会 7

2013/06/14

赤ちゃんが普段自分が過ごしている言語環境に選好を示すのはなぜか。とう問いに対する答えは「慣れ」なのでしょうか。それほど単純なものではないそうです。

多様な言語環境を背景に持つ子どもについての研究からは、ネイティブ話者への選好は、「単に、より理解しやすい言語への選好にもとづいたもの」というわけではないことが示唆されています。さらに、ことばにもとづいた社会的評価は、慣れ親しんだ刺激に対する領域一般的な選好に由来するわけでもありません。むしろ私は、「子どもが示す、ことばにもとづく社会的選好は、社会的世界をカテゴリー化するベースとしてことばを使用するという傾向を反映したものである」と提案したいと考えています。この傾向は、ヒト認知の進化に由来すると考えられます。(日本赤ちゃん学会第13回学術集会プログラム・抄録集p14-15)とKinzler氏はいいます。

慣れているや理解しやすいといった理由だけではなく、社会をカテゴリー化するためにことばを使う。カテゴリー化して理解するということなのでしょうか。私が誤った理解をしているかもしれませんが、とても興味深い講演でした。

この講演を聞いて思ったことは、ことばによる社会的選好は所属感ということに関係するのだろうということです。自分の所属する社会の言語を好むのは、ヒトが社会を作って生きてきたことと関係していそうです。生活を共にする集団があり、そこに所属することで生きてきました。その集団の使用する言語によって表される価値観で世界を理解して生きてきたのだと思います。もちろん異なる言語を使用する別の集団もあります。講師は“Us and Them”とおっしゃっていました。安全で信頼できる社会的パートナーとしての“Us”とそれ以外の“Them”でしょうか。そこには異なる集団が存在し、
集団間で争うこともあったでしょう。しかし常に戦っているわけではなく、一緒にご馳走を食べることで集団間の緊張を緩和するということもしてきたようです。個人も異なる存在ですし、集団も様々な集団があります。“Them”を排除するのではなく、“Them”は“Them”としてあり、“Us”は“Us”としてあることが可能な世界に向かって進化してゆけると良い。

とても難しかった講演を聞いたあとの頭にはそんな想いが浮かんできました。

スクロール