ことばが、社会的カテゴリーとして機能しているのなら、赤ちゃんは何ヶ月くらいから、ことばを認識しているのでしょうか。Kinzler氏は次のような実験を紹介してくださいました。
赤ちゃんに、母語とそうでない言語で、同じおもちゃを提示します。すると、赤ちゃんは明らかに母語で提示されたおもちゃを選びます。例えば、日本語の環境にいる赤ちゃんは「here is your little bear」と英語で言うより「くまちゃんだよ」と日本語で言って渡した方を好むということです。実際には英語とフランス語で比較していらっしゃいました。この実験で、赤ちゃんが、とても早い時期からことばに対する明らかな選好を示すということがわかったそうです。
また、英語が母国語の赤ちゃんが英語で話す子どもの映像とフランス語で話す子どもの映像のどちらを好むかを調べた実験では、明らかに英語で話す子どもの方を選好したという結果が出たそうです。そして、この傾向は、英語とフランス語という言語の違いのみならず、同じ英語でもアクセントのちがいでも見られたそうです。自分のいる言語環境をかなり正確に捉えていると言うことです。
では、ことば以外、例えば白人と黒人といった人種、つまり視覚情報のちがいという要因はないのでしょうか。それも実験されたそうです。両親が白人の英語環境にいる赤ちゃんに、白人の子どもと、黒人の子どもの写真を見せたところ、白人の子どもを選好しましたが、赤ちゃんが生活する言語環境と同じ英語で話す黒人の子どもの映像と、フランス語アクセントの英語で話す白人の子どもの映像では、自分の言語環境に近い方をより選好したというのです。
では、なぜ言語は早期から強力に作用するのでしょうか。慣れなのでしょうか。もしそうなら、慣れはどこから来るのでしょうか?という疑問を投げかけていらっしゃいました。