唐招提寺で修された鑑真和上一二五〇年御諱において、鑑真和上座像 平成のお身代わり像の開眼法要に巡り会うご縁をいただきました。長い法要でしたが、開眼の儀では結縁縷という綱を通じて全参列者が開眼に結縁したり、舞楽が舞われたり、散華という声明にあわせて、たくさんの散華(紙で作った花びら)が頭上から舞い降りてくるなど、華やかでなおかつ厳かな心に響く法要でした。
修理を終えて5月末に落成式が行われた開山堂にお身代わり像は奉安され、今までは、年に数日しか拝むことができなかった国宝像に代わって、いつでも拝むことができるようになるそうです。
「平成のお身代わり像造立記録」(制作NHKプラネット近畿総支社 企画律宗総本山唐招提寺)というDVDにお身代わり像の造立過程が記録されています。
このお身代わり像は本物と同じ脱活乾漆技法で、製作されています。製作に当たったのは、岡倉天心が明治31年に創設した「日本美術院」の国宝修理部門を起源とする公益財団法人日本美術院国宝修理所。模造の製作は、形を写すだけではなく、材料構造技法などを解明しながら、本物を造立した仏師の精神に近づくことを目指して来ました。
そのために、国宝像を詳しく調査する中で、漆の層が薄くて軽いこと、絵の具の上から油を塗布する手法が用いられたことなど新しい発見がいくつかあったそうです。精緻に調べ上げてから丁寧に制作し、検討を加えてまた制作するという、気が遠くなりそうな手間と、情熱が注ぎ込まれているのだと感じました。
行程は、芯木を組み立てて、その上に塑土を盛って、お姿を整形してゆく。そして、その上に麻布を漆で張り込んでゆく。乾燥したら、背中部分を切り取って中の土をとり出す。そして最後は彩色です。こうして作られるのかと思いました。
お身代わり像の造立する過程で、国宝像について様々なことがわかった。その一つが本物のお像には作為が全く見られないことなのだそうです。その自然さが、人々の心を打つのかもしれません。