5歳児たちが、お別れ会の出し物を何にしようかと話し合っているのを近くで聞いていると、議論が噛み合わなかったり、脱線したり、ほとんど進展していなかったりするようにも思えるのですが、よく聞いていると、ひとりひとりそれぞれにいろいろな役割を果たして、ぶつかったり調整したりしながら、話し合って一つの結論を導き出していました。
こういった「話し合う」という態度は、社会生活の中でとても大切なことです。大人だって相手の意見を聞き、自分の意見を述べることが、いつもできているわけではありません。
大人だからこそ、固定概念や自分の考えに縛られてしまって絶対自分が正しいと思い込み、他の人の言うことに耳を貸すことすらできなくなっている場合も少なくないように思います。その思い込みが、意見だけでなくその意見を持っている人をも否定するように拡大していったりすることもあります。そうなると相手との心の溝がどんどん深まってしまいます。
企業をはじめ様々な組織で「情報共有」や「コミュニケーション」をいかに行うかということが話題になったり、研修のテーマになっています。それは、多様な人々が互いに求め合い、お互いのよいところを活かし合った方が生産性が高いからです。
子どもがしているように、思い込みや固定概念にとらわれず、心を開いて素直に話し合うことができるとどんなに楽しいし建設的でしょう。そのためには、まず相手を、相手の意見を認めること、最初から相手を否定しないことからスタートしないと何もはじまりません。異なる考えや相手を受けとめること、自分だけが絶対正しいと思い込まないことが必要なのだと思います。
他の人と共に力を合わせて生きてゆく。そのためには、お互いを理解し合うことが最も大切です。そのためにも話し合うことは、最も有効な手段の一つです。その有効な手段を建設的に活かし合うように使うのか、破壊的に使って対立や恨みや憎しみを産むのか、私たちひとり一人にかかっているのではないでしょうか。