「話すこともまた様々な場面で話す経験を積み重ねることにより身に付いていきます。その過程において、幼い子どもは言葉で伝えることが難しいと、泣いたり、不機嫌になったりしますが、保育士等が子どもの気持ちを汲み取り、丁寧に対応していくことで、子どもは徐々に分かるように話したり、言葉を介して相互に理解し合うことの大切さに気付いていきます。
さらに、子どもは成長とともに、自分の気持ちを調整しながら相手に分かるように話したり、相手の言葉からその気持ちを汲み取ることができるようになり、保育士等や友達との会話を楽しめるようになります。そして、相手の話し方や話のおもしろさを味わいながら、自分も相手に伝わるように話したり、言葉を選んだりするようになっていきます。」(保育所保育指針 第3章保育の内容 1 保育のねらい及び内容 (2) 教育に関わるねらい及び保育 エ言葉(イ)内容 ⑥人の話を注意して聞き、相手に分かるように話す)
話すことももちろん大切です。その前提として、「保育士等が子どもの気持ちを汲み取り、丁寧に対応してゆく」ことが大切になってくるのでしょう。そのことによって子どもは自分の気持ちに気づき、それを言葉を使って伝える。言葉を介して相互に理解し合うことがわかってくるのでしょう。
友だちにおもちゃを取られ、悔しくて友だちをたたいてしまった子に、「謝りなさい」と無理矢理謝らせても、あまり意味がないように思います。「おもちゃを取られて悔しかったね。」とその子の気持ちを汲み取ってあげる。それを言葉にして表してあげることで、その子は「これが悔しいってことか…」と自分の気持ち、感情に気がつくことができるのです。自分の気持ちや感情がわかるようになることで、相手の気持ちを汲み取り、自分の気持ちを調整し、相手にわかりやすいように言葉を選んで、自分の気持ちを伝えることができるようになるのだと思います。
私たち保育者に必要なのは、「謝る」事を教え込むのではなく、その子の気持ちにより添い共感してあげることなのだと思います。