ナショナルジオグラフィック2013年1月号に掲載されていた「小さな細菌の世界」を読んで、おもしろいと思っていたら、興味を引かれる別の記事が目にとまりました。サイエンスライター デビッド・ドブス氏による「落ち着きのない遺伝子」という記事です。最初タイトルを見たとき「落ち着きのない遺伝子」ってどういうことなのだろうと思いました。
人類がチンパンジーと共通の祖先から別れたのが700万年前、私たちの直接の祖先ホモサピエンスが生まれたのが20万年前のアフリカだといわれています。そして、約7万年まえにアフリカを出て世界中に広がりました。
ドブス氏はライプチヒのマックス・ブランク進化人類学研究所で遺伝学の立場から人類の起源を探っているスパンテ・ペーボ氏のことばを引いています。
「これほど活発に動き回る哺乳動物はほかにいません。」
「今いる場所でも十分生きていけるのに、境界を乗り越え、新天地を目指す。ほかの動物はこんなことはしません。同じ人類でもネアンデルタール人は10万年以上繁栄しましたが、世界各地に広がったわけではありません。ところが、現生人類(ホモサピエンス)はたった5万年で世界中に広がりました。ある意味尋常ではありませんよ。何が待ち受けているかわからないのに大海原へ船を進め、さらに火星にまで行こうという勢いです。私たちは決して立ち止まらない。これは、なぜでしょう?」(ナショナルジオグラフィック2013年1月号61ページ)
ドブス氏は、この私たちを駆り立てる「尋常ならざる探求心」がどこから生まれてくるのだろう?という疑問から、探求心が生来のものとすれば、ゲノムに端を発しているとも考えられる。としています。「尋常ならざる探求心」を持って世界中に広がり、なお火星にまで行こうとしている人類。物理的に移動することではなくとも、未知の領域を明らかにしようとする研究者の探求心も同じです。一所にとどまっていることができずに、新天地を求める探求心に関わる遺伝子があるのではないか?それが「落ち着きのない遺伝子」だというのです。
探求心といえば、子どもです。子どもの間にこの探求心を存分に使って外界を知り、困難に行き当たったときでも、様々な方法を駆使して乗り越えることを考える術を身につけてゆくのです。
「落ち着きのない遺伝子」とても興味をかき立てられるテーマです。