赤ちゃんは、視力が弱くはっきりとは見えないことで、余分な情報が入ってこないので、表情を読み取りやすいということを知りました。しかし、以前別の実験で赤ちゃんが猿の顔を見分けるということが取り上げられていたことと比べると、視力が弱くディーテールを見ることができない赤ちゃんがどうやって猿の顔の微妙な違いを見分けているのか不思議です。
ところが、自閉症の人の中には、赤ちゃんの時には良くないはずの視力が良く、細部まではっきりと見えてしまう人がいるそうです。定型発達の場合は、顔を上下逆さにひっくりかえして提示すると顔として認識するのが難しく、これを倒立効果というそうですが、自閉症の人の場合この倒立効果が起こりにくく、顔の全体というよりも、目、鼻、口といった部分に注目して見ていて、特に目のあたりよりも口のあたりを見ていることが多いという研究があるそうです。
自閉症などの人は、見ている世界が全く違うということを聞いたことがあります。多くの人は、注意を向けているものははっきりと見ていますが、それ以外の視界には入っているものについての情報はある程度省いて見ています。それに対して、自閉症などの人の中には視界に入ってくる全てのものの情報が同じレベルで見えてしまう人もいるそうです。
聞くことについても、健常といわれる人たちが、様々な音のなかから聞きたい音を選んで聞くことができるのにたいして、あらゆる音が同じレベルで耳に飛び込んできたり、とても大きな音で聞こえたりするそうです。
感じ方が違うのです。ただ違うだけなのです。自閉症の人に限らなくても、誰でも一人ひとりそれぞれの見方をし、それぞれの聞き方をしているはずです。ただどれだけ違うかの差だけであって、大多数の平均的な感じ方とは違いが大きいだけなのです。その人でないとできない見方や聞き方があるということです。
それが、大多数の人とコミュニケーションを取るのに不都合だったりする場合もありますが、その人にしか見えない聞こえない世界もあるのです。お互いがそれぞれを理解するように努め、それぞれを認め合い、それぞれの良いところがみんなのために活かされるようであると良いと思います。