私たち晴眼者は、何気なくものを見ています。視力が良い人そうでない人、様々な人がいて様々な見え方をしています。そして、視覚から得る情報が、他の感覚から得る情報よりも圧倒的に多いのです。
赤ちゃんはどうでしょう、赤ちゃんはお母さんのお腹の中にいるうちから様々な感覚を使っているという研究が進んでいることは以前紹介しました。嗅覚については見解が分かれるようですが、触覚、聴覚、味覚は胎児のうちから充分に使っています。赤ちゃんに視覚が必要になるのは、生まれ出た後からです。もちろんおなかの中では光は感じているそうですが、目を開けて見るのは生まれてからです。
中央大学教授 山口正美氏の講義を聴く機会がありました。先生は視覚の研究をされています。
赤ちゃんはどのように世界を見ているのでしょうか。生後1カ月の赤ちゃんの視力は0.02くらいで、6カ月頃になってようやく0.3〜0.4位の視力になるそうです。ですから、赤ちゃんの見ている世界は、鮮明ではなくぼやけているのです。
ところが、赤ちゃんは生後4日でお母さんの顔を見分けるそうです。もちろん顔だけがはっきり見えるということはありません。ぼやけて見えています。このはっきり見えないということが、赤ちゃんの見る、特に顔を見ることの発達にとっては重要な意味を持つそうです。
はっきり見えないということは、顔のディテールまでは見えないということです。つまり視覚から受け取る情報量が少ない。情報が少ないと学習しやすいということかありますが、ぼやけて見える方が、表情を読み取りやすいということもあるそうです。
たしかに、はっきりした写真の顔を見ると、目がどう、眉がどう、口がどうなっている。ほくろがあるなど細かなところに目が行ってしまって、無表情なのか、笑っているのか顔全体を見直すことをしないとわからないことがあります。ところが、ぼかした写真だと、目と口の形なのか位置関係なのか、表情がわかりやすいように思います。
視力が0.01という大人の人に裸眼で、1メートルほど離れたところに立った私の顔を見てもらいました。顔だということは認識できるそうです。笑った顔、怒った顔をして見たら、表情もわかるといっていました。
赤ちゃんにとっては表情を見分けることは大切なことなのです。ですから、必要な情報だけを活かして、不必要な情報はとりいれない、視覚の情報リテラシーの能力が赤ちゃんには備わっているのではないでしょうか。