自己と他者の関係で、自分に心があり他者にも心がある。他者は心で何を思っているのだろうと思いをめぐらすこと、相手の立場に立って考えることは、他者と協力し合い社会を作ることで発展してきた人類にとってはとても大切なことです。
「心の理論」という研究があり、そのなかの誤信念課題というのを紹介しました。
他には、スマーティ課題というのがあります。スマーティとはチョコレート菓子です。日本にあるマーブルチョコレートみたいなチョコレートです。多くの人に親しまれたパッケージで、誰でも箱を見ればそれがスマーティだとわかるほどポピュラーな存在で、実験はこんな風に行われます。
スマーティの箱を子どもに見せて、「この中に何が入っていると思う。」と尋ねます。子どもは、スマーティと答えます。箱の中を見せて、実はスマーティではなく、鉛筆が入っていることを見せます。その後に「この箱を○○くんに見せて、何が入っているかと尋ねると、なんて答えるかな。」と尋ねます。
実験の結果では5歳くらいではチョコレートと答えるそうですが、3歳では、鉛筆と答えるそうです。
この実験の結果から、心の理論が理解できるのは4歳ぐらいだといわれています。つまり、相手の立場になり、気持ちになって考えられるのは4歳くらいからだというわけです。
しかし、先に紹介した18カ月くらいの赤ちゃんが、ある人が中座している間に増えたおもちゃを、中座から戻った時にその人に渡すことができるという実験は、赤ちゃんが中座した人の心に思いを馳せているように思えてならないのです。
ひとつ忘れてはならないのが、誤信念課題にしても、スマーティ課題にしても、実験はことばを介して行われているということです。ですから、ことばを話せない赤ちゃんにはこの実験はできないのです。ことばにするととても説明しにくく、特に文書にしてしまうと大人でも注意深く読まないと、何のことをいっているのかわかりにくいと思います。ですから、ことばを操ることができない赤ちゃんに同じ実験をすることはできません。
本当は4歳というよりもっと早くから、自分のこと、他者のこと、他者の心を考えているように思います。ことばを使わない方法で、同じよう実験をすれば、もっと小さいうちから心の理論を理解している結果が出るのではないかと思うのです。