園長ブログ

こころ 2

2012/10/13

人間とは何か?を探求する比較認知発達科学では、チンパンジーを初めとした他の霊長類とヒトを比較して研究するそうです。

あるグループを知るには、そのグループを外側から眺める視点が不可欠です。内側だけから見ているとわからないことがたくさんあります。人間というグループについて知るために、他の霊長類と同じところ、違うところを調べるのです。

そして、赤ちゃんを研究することによって、人間の発達的起源をさぐり、子育て、教育環境をどう整えるとよいのか。赤ちゃん自身はどのように世界を認識しているのか。とう問題を考えようというのです。そのときに赤ちゃんは大人のミニチュアではなく、赤ちゃんは赤ちゃんなりの存在であるということを忘れてはならないのです。

ところで、赤ちゃんは、大人のようにことばをつかうことができないので、聞き取り調査のようなことはできません。ですから、赤ちゃんを観察することで研究するしかないそうです。観察も、最近はテクノロジーの発達により、様々な方法があるそうです。前にも書いた馴化と脱馴化を観察する方法やおしゃぶりを吸う回数と強さを測り、その変化により、赤ちゃんが刺激に対して反応しているかどうかを知る方法の他にも、赤ちゃんの視線を指標とする方法もあります。赤ちゃんがどこをどれくらい見ているのかを記録できて、好選注視法というそうです。他には心拍数や脳波を測ったりMRIが使われることもあるそうです。

still face experimentという実験が紹介されていました。赤ちゃんがお母さんと向き合って楽しく遊んでいるとき、お母さんは表情ゆたかに赤ちゃんに赤ちゃんと関わっています。次に突然お母さんが無表情になり、その状態を1分間続けます。その後また普通に表情豊かに関わると赤ちゃんはどう反応するかという実験です。お母さんが表情豊かに関わっているときは、赤ちゃんも楽しそうにお母さんと遊びます。ところがお母さんが無表情になったとたん、赤ちゃんはなんとかしてお母さんの反応を引き出そうとします。ほほえんでみたり、両手を前に出したり、甲高い声で叫んでみたり、ついに泣き出してしまいます。そして、お母さんが元の通り表情を取り戻すと、赤ちゃんもすぐに笑顔に戻ります。このときに、赤ちゃんの顔の温度変化をみると、お母さんが無表情になったとたんに顔の表面温度が下がるそうです。赤ちゃんはちゃんと表情を読み取ってコミュニケーションを取ろうとしているのです。

この実験をお母さんの代わりに人間と見間違うくらい精密にできたアンドロイドでも試したら、相手がアンドロイドでは、相手が無表情になった時に表情を引き出そうとする赤ちゃんの行動は人間の時よりも少なかったそうです。赤ちゃんは人間とアンドロイドを見分けているのですね。

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