指差しが、ことばの前の段階だというのはよく言われることですが、指は、意味するもの、対象に意味をつける役割を果たします。つまり言葉と同じです。一方、指差しされる対象は意味されるものです。指差しがことばの前のことばといわれる所以です。
指差しには、2種類の指差しがあります。赤ちゃんの「あれが欲しい!」という欲求の指差しと「あれ見て!」という叙述の指差しです。叙述の指差しは、指差した対象をお母さんと共有しようとしているのです。赤ちゃん、お母さん、対象の3項の関係が、対象についてお母さんと赤ちゃんが共有し、共感する構造になっています。そんなときは赤ちゃんとお母さんは一緒に対象を見ています。共同注意と言われる状態です。当然、この時は赤ちゃんとお母さんは向き合っているわけではありません。共有、共感が起こる時の視線は、決してぶつかる方向ではなく、共に同じものを見る視線です。これは、赤ちゃんとお母さんにに限ったことではないと思うのです。組織でもそのメンバー全員が、一つの目指す方向を向いた時に、共有共感が生まれるのです。視線を交わらせて相手を見てばかりいると、相手の嫌なところばかりが目について、何でも誰かのせいにしてしまうものです。やはり、それは見るところを間違えているのではないでしょうか。見るべきは、みんなで目指す方向です。赤ちゃんのコミュニケーションはそんなことを教えてくれました。
さて、実際にことばをつかうには、「見たてる」能力が必要になってきます。子どもが、お皿に砂をいれて、「ごはんできたよ」と持ってくる。砂をごはんに見たてているのです。この見たてる能力が、ことばを使えるようになるためには重要なのです。なぜなら、ことばも象徴機能(シンボル機能)のひとつだからです。また、様々なものを種類で分けてラベルをつける、カテゴライズする能力も大切になってきます。そういった能力をつけながら、次第にことばを使うことができるようになってゆくのです。
9ヶ月ごろに3項関係が成立し、12ヶ月で意味のあることばを話し始め、15ヶ月ごろには語彙が3語くらいになり、18ヶ月ごろに急に語彙が増える現象があり、語彙爆発と呼ばれています。もちろん、ことばの獲得には個人差が大きいので、ここであげた月齢は目安です。
では、ことばを育てる環境はどのようなものが良いのでしょう。気になるところです。養育者の働きかけとしては、子どもが注意を向けたものを共有し、子どもが興味を持っている対象の名前であったり、言語的な情報を提供すること、子どもの興味の対象を知って、それに合わせた言葉がけをすることで、子どもが語彙を獲得してゆきます。
決して、子どもの興味感心を無視して、大人が教え込むのではなく、子どもの興味感心が第一だということだと思います。
ことばを育てる保育者の役割は、子どもの様々な反応を受け止め、子どもに返すこと。子どもが、「この人と遊びたい」関わりを持ちたい相手になること。子どもの自発性を大切にすること。ひとりひとりの子どもの思いを受け止める。子どもがイメージを膨らませて遊ぶことができる場をつくる。発達に応じた環境を用意する。ことだそうです。
どこかで聞いたことばが、並んでいます。