今の時期は少なくなりましたが、夏のあいだよく目にする虫がいます。緑色っぽく見えるもの、赤っぽいもの、褐色系のもの、見る角度によって違った色に見えるのもいます。どれも、金属のようにピカピカと光っています。センチコガネやオオセンチコガネという名前の体長2センチくらいの甲虫です。残念ながら私にはセンチコガネとオオセンチコガネの差があまりよくわからないので、ここではセンチコガネとしておきます。
この虫は、主に動物の糞を餌にしています。いわゆるフンコロガシの仲間です。近年夏になるとこのセンチコガネをたくさん見かけるのは、この辺りに鹿が増えたことで餌が増えたからでしょうか。
ピカピカ光ってきれいなので、時々子どもたちが捕まえてきます。時々というのは、あまりにもたくさんいるので、子どもたちも見飽きているのです。もちろん、触ったあとは手を洗っていますので、ご心配なく。
このセンチコガネですが、不思議に思っていることがあります。土の上を歩いている姿よりもコンクリートのうえで仰向けにひっくりかえって、足をバタバタ動かしている姿をよく見るのです。その姿が目立つので、いつもひっくりかえっているなと思ってしまうのかもしれませんが、本当によく見かけます。しばらく見ていても、いっこうに起き上がれそうにありません。まあるい背中のせいで短い足が地面に届かないのです。羽根を広げるなどすると起き上がれるのかもしれませんが、そんなことをしているところを見ません。
もしかすると、一度ひっくり返ると二度と起き上がれないのかもしれません。仰向けのまま動かなくなっていまっている姿もよく見ます。一度ひっくり返ると起き上がれないというのはかなり危機的状況なはずです。それなのにどうして起き上がれにのでしょう。
仰向けになってもがいている姿を見て、ひとつ考えついたのが、コンクリートなど平らなところで起き上がれなくなっているということです。短い足でも引っかかるところがあれば、起き上がれるのです。自然界では平らなところはほとんどないでしょうから、たとえひっくり返ったとしても、命に関わるほどのことにはならないでしょう。人間が作った平面の上でひっくり返ってしまうと、大変なことになるのです。
そう思うと、センチコガネに少し申し訳ない気持ちになってしまいます。ですから平らなところでひっくり返ってもがいているセンチコガネを見ると、平ではないところに移動させたくなります。そうすれば、起き上がれることもあるからです。
ただ、あまり長い時間ひっくり返ったままでいると、体内のバランスが崩れて起き上がってもまたすぐにひっくりかえってしまうのだ、ということを聞いたことがあります。確かめたわけではありませんので、なんとも言えませんが、人間の営みによっていろいろな影響が出るものだなとものだなと思いました。