赤ちゃんはお母さんのお腹の中で動いて、音を聞き、光を感じ、味だってわかるようになっています。発達のプログラムに沿って、生まれてからの準備を着々と進めているのです。
赤ちゃんの動きの中には、お母さんのお腹の中ではしていたのに、生まれるとしなくなる動きがあるそうです。例えば、顔にさわるしぐさは胎児期にはよく見られますが、生まれてからは減ってゆきます。指しゃぶりは胎内でしていて誕生に向けてだんだん減少してゆき、生まれてしばらくすると、また指しゃぶりが増えてくるそうです。
そしていろいろな動きには赤ちゃんが自ら意識的に行っているものが多いことを知りました。例えば、新生児が仰向けに寝ていて左を向いていると自分の左手が見えます。そうすると右手よりも左手を動かす頻度が有意に高いそうです。見ている方の手を意識的に動かしているのです。主体的に動いているのです。
また、赤ちゃんはいろいろなことに気づきます。赤ちゃんに見慣れないものを見せると、不思議そうに見ますが、ずっと見続けていると慣れてきて、だんだん見なくなるそうです。そこで、別のものを見せると、またよく見るようになります。これは赤ちゃんが自分の見ているものの違いに気づいているということです。この自ら気づく力が育ってゆく力なのです。
こんな実験が紹介されていました。仰向けに寝ている赤ちゃんの上にモビールをつり下げ、そのモビールと赤ちゃんの手を糸で結びつけます。赤ちゃんが普通に動くと結ばれた糸に引かれてモビールが動きます。そのうち赤ちゃんは、他の手足ではなく、糸の結ばれた手を動かすとモビールが動くことに気づきます。そうすると、モビールと結び付けられた手を明らかによく動かすそうです。「どうやら、この手を動かすとモビールが動くようだぞ」と赤ちゃんは自分で気づいて自分で動いているのです。自分で学習して育つのです。
そんな赤ちゃんに接する時に大切なのは、赤ちゃんが気づく道のりを邪魔しないこと。いろいろなことに気づいている赤ちゃんに気づくことだそうです。
そうしようと思ったら、まず赤ちゃんをしっかりと見ることが必要になってきます。大人の勝手な思いだけで、してあげるのではなく、赤ちゃんは何をしようとしているのかをしっかりと見ることです。もちろん一人ひとり違う存在である目の前の赤ちゃんをしっかりと見て、今、目の前にいるその子に今必要なことは何かをよく考える必要がありそうです。