ヒトとは何か?ヒトの始まりである赤ちゃんを研究することで解き明かしてゆこうというのが赤ちゃん学なです。その研究成果を保育や子育てに活かすことが大切になってきます。
ヒトは弱くなることで進化した。一人一人は弱い存在でも社会を作り力を合わせることで生き延びてきたのです。そして、赤ちゃんや高齢者など一番弱い人をその真ん中で守ってきたのです。ですから、子育ては社会でいろいろな人が携わって行うのが最も自然なことなのでしょう。
育児は社会的な営みなのです。ところが、夫婦と子どもという標準的な家族構成の世帯では、乳幼児を育てる時期、お父さんは朝早くから夜遅くまで仕事で、お母さんと赤ちゃんが、一日のほとんどを家で過ごしているということが多いのではないでしょうか。これでは、お母さんは大変です。本来なら、社会的営みであるはずの子育てを、お母さん1人が担わないといけないのですから、不自然ですし無理があります。
また、赤ちゃんにとっても、ほとんどの時間をお母さんと過ごすのですから、刺激がとても少なくなってしまいます。家でお母さんが家事をしていて、赤ちゃんが1人で遊んでいる状態は容易に想像できます。こういう時間が長くなってしまうと赤ちゃんは、いろいろな人と関わることができません。特に子どもどうしの関係を築こうにも周りに子どもがいないことには、築きようがありません。子どもがいろいろな人の中で育つという自然な姿は、今では自然ではなくなってしまっているのです。お母さんと赤ちゃんが2人だけで家にいる家庭の子どもこそ、保育に欠けるのかもしれません。
ところで、年を重ねて子どもを生まなくなった女性が長生きをするのは人間だけなのだそうです。そのことから、いわゆるおばあちゃんは子どもを育てる役割を担っているのではないかという考え方があります。
言われてみれば道理にかなっているかもしれません。おばあちゃんなら自分の子育て経験を生かして、ゆったりと余裕を持って子どもに関わることができます。また、ご近所のお茶のみ友だちが集まって、おしゃべりをしながら、子どもの面倒を見ることが、自然に行われていたのではないでしょうか。子どもにとってはいろいろな人がいて、多くの刺激を受けることができますし、お年寄りにとっても子どもと接することは元気の元にもなります。
いろいろな人が育児に関わることが、人間が進化の上で獲得してきた方法なら、それができにくくなった現代こそ、あえてそういう場と機会を用意する仕組みが必要になってきます。保育園はそういう役割を担うべきだとお思います。