お地蔵さまの姿を描いていた年長児たち。一所懸命に取り組む姿がとてもステキでした。何度も言いますが、集中しているときの顔、特に目がステキです。
もちろんどの子も一様に描くわけではありません。さっと筆が進む子もいれば、なかなか描き始められない子もいますし、「どう描いたらいいのかわからへん・・・」と困っている子もいます。そんな子には、保育士の先生が、その子にはお地蔵さまがどう見えているのか、などその子が自分のイメージを具体的にしやすいように声をかけたり、自信を持てるような声がけをしていました。
割り箸ペンで輪郭を描き終わったら色をつけます。石でできたお地蔵さまは石の模様や、苔が生えている所はあるにしても、基本的にはグレーです。何を使って塗るかを考えないと、画面がグレー一色になってしまいます。保育士の先生は、すごく薄くしたグレーの絵の具を使って、お地蔵さまのお身体だけを塗ることを子ども立ちに提案したようです。子どもたちはとても良い感じに仕上げていました。お花がお供えしてあるのですが、子どもたちはそのお花もしっかり描いて、そこだけに違う色を入れており、それがアクセントになって画面が引き締まりました。
毎日登降園の時には手をあわせ、地蔵盆の前には一所懸命にお身拭いをして、美しくなっていただき、地蔵盆ではお参りをしたお地蔵さま。お地蔵さまが、一瞬光って笑うところを見た子もいます。そんな経験を経て子どもたちのお地蔵さまへの思いはいつもより深くなっていたでしょう。だからこそ、先生はこの時期に子どもたちにお地蔵さまを描く機会を提供したのだと思います。今までの経験によって子どもたちの心の中にお地蔵さまが深く入っていらっしゃるからこそ、絵を描くことができるのです。
もちろん、いろいろな経験を経なくても、「お地蔵さまを描きなさい」といって描かせることはできます。でもそれでは、ただ描いただけになってしまって、心からの表現ではなくなってしまいます。
先日開催した祖父母会で、展示されたお地蔵さまの絵をご覧になった方が、芸術作品ですね。と仰ってくださいました。描画技術というよりも、子どもたちの心の中のお地蔵さまが紙の上に現れていらっしゃったからこそ、ご覧いただいた方がそう感じてくださったのだともいます。