構成論的発達科学では、医学、心理学、脳神経科学などの人間学から得られる胎児期からの発達に関するデータと、発達障害者自身による当事者研究から明らかになること、そこから導き出される仮説に基づいて、ロボティクスや情報学がモデルを構築し、モデルから得られたシミュレーション結果を人間学と発達障害の当事者が評価検証するという方法で進められることは紹介しました。
構成論的発達科学の研究テーマのひとつは「人の心はいかにして発生し発達するのか」です。人の心の大きな特徴として社会性があります。ホモサピエンスは社会を構成するという戦略をとることで生き残り、現在のように繁栄してきました。社会的認知の基盤は自分と他を知ること、つまり自他認知であり、胎児期からの身体感覚や運動統合についての研究を深めることが大切なのだそうです。構成論の手法を用いて発達モデルを作ってゆく研究が進められています。また、知性を創ることによってその仕組みを理解し原初から解明し発達する知性の根源を探ることも視野に入っているようです。
発達障害が急増していますが、発達障害といわれる人の半数は原因不明なのだそうです。今までは発達障害が起こる要因としては遺伝的な要因が大きいと考えられていましたが、最近では胎児期からの身体と環境との相互作用が重要な意味を持っているのではないかということがわかってきているそうです。ですから、胎内環境も含めた発達初期の環境と発達障害の関係を研究する必要があるのです。しかし、胎児を直接研究することは困難なことなので、胎児の筋骨格モデルや感覚受容器の分布モデル、子宮内環境モデルをつくり、シミュレートすることで研究しようとしているそうです。
発達の連続性ということが大切なのはわかりますが、生まれてからではなく、胎児のころから見てゆく必要があるのですね。
赤ちゃんはお母さんのお腹の中にいるときから自発的に動き、自ら環境に働きかけ身体感覚を統合してゆくことで発達してゆく。それが社会性の発達に繋がっているのではないかと考えられています。そうであるなら、生まれてからも自ら動き、自発的に環境に働きかけることで子どもは育ってゆくことがますます重要になってくるということです。子どもが自発的に環境に関わること、主体性が最も大切なことなのです。