赤ちゃんは、ことばを獲得する前段階として非言語によるコミュニケーションを行っています。お母さんや養育者が赤ちゃんの働きかけに対して、適切に応答することによって、心が通じ合うとでもいうのか、体験を共有する、経験を分かち合うようなコミュニケーションの段階があります。赤ちゃんとお母さんや養育者の2人の関係で成り立つコミュニケーションが2項関係といえます。
生後8ヶ月から12ヶ月くらいになると、赤ちゃんはお母さんが何かに注意を向けること、こころが意図をもっていることを理解します。ですから、赤ちゃんが未知の場面や状況を理解するために、お母さんの表情を見る社会的参照などがあらわれます。
つまり、赤ちゃんはお母さんとの2項関係を介して外の世界を知ることをします。赤ちゃん・お母さんの二項関係から、赤ちゃん・お母さん・ものの三項関係で世界を理解するようになります。ものを見せる、渡すなどの行動も見られますし、共同注意(joint attention)も行われるようになります。共同注意とは、自分と他の人が一緒に同じものを見ていて、お互いにそれを知っている状態です。一緒に見ている。共に同じものを見ている状態です。
指差しは、この共同注意です。お母さんが、赤ちゃんの前で、絵本を指差した時に赤ちゃんがお母さんの指差した絵本に視線を移せば、お母さんが指をさしているその先には、何かお母さんの意図するものがあるというとを理解しているということです。
反対に赤ちゃんが指差しをする場合、指を指した先の何かを他のものと区別して、他者に示そうという意図が赤ちゃんにあります。好きなおもちゃを指差してとって欲しいと言わんばかりにしている指差しは欲求の指差しといわれます。また、たとえば、好きなテレビ番組が始まって、まるで「見て!見て!」といっているかのような指差しをすることがありますが、これ叙述の指差しというようです。
欲求の指差しは、お母さんの存在を理解はしていますが、指差した対象をお母さんと共有しようという意図はあまりなさそうです。
叙述の指差しの場合は、要求を伝えるだけではなく、指差したものをお母さんに知らせたい、対象を相手と共有したいとう意図をもった指差しだと言えます。
赤ちゃんが話し出す前にも、様々な段階で、様々な方法を用いて、自らコミュニケーションをとろうとしていることを、改めて学ぶことができました。