「大学生の4人に1人は「平均」の意味を正しく理解していない」先日、こんな報道がされていました。
日本数学会が行った「大学生数学基本調査」の結果についての報道です。この調査は、大学生が高等教育を受ける前提となる数学的素養と論理力をどの程度身につけているのか、 その実態を把握し、大学教育の改善に活用するとともに、初等中等教育に対する提言の材料とすることを目的として、全国の大学生6,000人を対象に行われたものです。
近年、大学生の学力が低下しているといわれていますが、大学の先生の間で学生から論理的文章を理解する力、論理を組み立て表現する力が学生から失われつつあるのではないかという危惧がひろがっていることから、この調査が行われたそうです。
問題は、小学校や中学校で得意だった科目などを聞くアンケートと、5つの問題から成っています。問題の1つが新聞のヘッドラインにもなった平均の問題です。下に紹介しておきます。
ある中学校の三年生の生徒 100 人の身長を測り、その平均を計算すると 163.5 cm になりました。この結果から確実に正しいと言えることには○を、そうで ないものには×を、左側の空欄に記入してください。
(1) 身長が 163.5 cm よりも高い生徒と低い生徒は、それぞれ 50 人ずついる。
(2) 100 人の生徒全員の身長をたすと、163.5 cm × 100 = 16350 cm になる。
(3) 身長を 10 cm ごとに「130 cm 以上で 140 cm 未満の生徒」「140 cm 以 上で 150 cm 未満の生徒」・・というように区分けすると、「160 cm 以上で 170 cm 未満の生徒」が最も多い。
(答えは、(1)× (2)○ (3)× だそうです)
ちなみにこの問題の全体の正答率は76.0%だったそうです。
また、問題の尋ね方や答えについて、細かな議論はあるようです。
私がこの報道を通して感じたのは、「学力」とはなにかということです。
メディアはショッキングなヘッドラインで「学力が低下した」「ゆとり教育の結果だ」といい、「もっと勉強させろ」的な意見が多いように思います。試験の点数が下がったから科目や時間数を増やして、もっと詰め込めば良い。ということなのでしょうか。
一体、子どもがどんな能力を身につけて欲しいのか。そこのところがもっと議論されるべきだと思います。今の論調は試験のために暗記する能力ばかりつけさせようとしているようにしか思えません。
私は「学力」を「学ぶ力」と読みたいと思います。子どもたちが「自ら学ぶ力」をつけられるようにするのが大人の役割です。
不思議だな?なぜだろう?という探求心からスタートし、知りたい、わかりたいという知識に対する意欲とそれを知るための忍耐力、得た知識を元に考える抽象的、論理的思考力、自分の考えを人に伝えるための表現力、そんな力を子どもが積極的に環境に関わることによって身につけてほしいものです。乳幼児期こそ、その基本を身につける大切な時期だと思います。